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2011/12/5
最終回。感想とこれからと
運用会社日本株トレーダー 鰊
IPO最新情報や西堀編集長のIPOレポート、FXストラテジストによる連載コラム、コモディティウィークリーレポートなど、今話題の様々な金融商品をタイムリーにご紹介するほか、資産運用フェア、IRセミナーのご案内など情報満載でお届けしています。
東京工業品取引所探訪
東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史
09年7月13日
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日本に取引所がいくつあるでしょうか
皆さんお馴染みの証券取引所は6。(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、ジャスダック)。他に5取引所があります。東京金融取引所、東京工業品取引所、東京穀物商品取引所、中部大阪商品取引所、そして関西商品取引所。このうち東京金融取引所はFXの取引所取引「くりっく365」でおなじみでしょう。他の4取引所は商品先物の取引所です。このうち、最近新聞等で目にする機会が増えているのが東京工業品取引所です。
昨年株式会社化し増資で資金調達を実施、ナスダックOMXの最新システムを導入し、今年5月に稼動しました。この6月の株主総会での承認を得て新社長を迎えました。さらに将来の上場を目指すという内容を含む中期経営計画も発表しています。
一方で、業界全体に関わる事として商品先物取引法が今年成立して、施行が見込まれています。商品先物取引のイメージを悪化させる要因であった強引な営業を規制する内容のようです。こうした中で果敢に攻勢をかけようとする株式会社東京工業品取引所(以下、東工取)をお尋ねして、経営企画担当の小野里執行役にお話を伺いました。
Q.東工取で取扱う商品を教えてください。
東工取は、工業用原料となる商品の先物取引を扱う市場です。上場商品は金(標準取引)、金(ミニ取引)、金先物オプション、銀、白金(標準取引)、白金(ミニ取引)、パラジウム、アルミニウム、ガソリン、灯油、原油、ゴムの12種類です。1951年設立の東京繊維取引所、1952年設立の東京ゴム取引所、1982年設立の東京金取引所を母体とし、これらが1984年に統合して誕生しました。この中で最も古い繊維取引所の上場商品(スフ糸、綿糸、毛糸)は、これまでに全て上場廃止になっています。それでもゴムは50年以上、金は25年以上の歴史があります。一方で、2007年に金(ミニ取引)、2008年に白金(ミニ取引)を上場しました。
Q.個人投資家にアピールする点などを教えてください。
基本的に「くりっく365」などと同様に証拠金取引で、元手となる証拠金の20〜30倍の取引が可能です。その上、取引単位を小さくした、ミニ取引の上場により、高額な金や白金の取引を少ない元手で取引可能にして、個人投資家が参加しやすくしました。
また個人投資家の間にも分散投資という考え方は少しずつ広まっていると思います。分散投資で自分の資産のポートフォリオの安全性を高めるためには、株、債券に加えて、それらとの値動きの相関が低い投資対象を少し加えることで、資産価値の急激な変動リスクを大きく低減することができます。REIT、FXなどもありますが、商品も株式や債券との相関が小さいので、分散投資の一環として良い投資対象だと思います。これは年金などの資金を運用する機関投資家の資産構成についても言えることです。
Q.商品先物は証拠金取引、差金決済ということで、FXやCFDと同じようなものでしょうか?
証拠金取引であることやほとんどの場合で差金決済であることなどは非常に近いのですが、異なる点も幾つかあります。FXのように円で金利の異なる他通貨を売買するわけではありませんので、スワップポイントなど金利がつくことはありません。
商品先物の場合、商品別に取引の満期が定められていて最終日「納会日」には現金または現物の受渡で決済しないとなりません。商品別に最長半年から1年間の期間が定められており、参加者はその期間内でポジションを持つことができます。FXやCFDの場合は期限がなくずっと投資していられますが、商品先物の場合取引期限があるため、それを超えて投資したい場合には、ロールオーバー、つまり新たに買い直しや売り直しをしないとなりません。これは商品先物取引の基本なのですが、個人の方は面倒だと感じるかもしれません。このため、FX形式の期限のない新規上場商品を研究しているところです。
Q.現物決済もあるとか?
商品先物の大きな特徴は現物受渡決済です。多くの上場商品は取引できる最後の日である「納会日」にポジションが残っていると、これについては現物受渡決済の義務が発生します。例外は原油と2つのミニ取引で、これらについては現物受渡というのはなく、取引最終日に残っていたポジションはすべて現金決済となります。個人投資家など現物受渡を希望されない投資家は商品取引会社に委託しての取引に参加しており、受渡義務発生前に強制的に反対売買されるため基本的に現物受渡しはありません。しかし実需の価格変動のリスクヘッジのために参加している事業者間では、現物受渡決済が盛んに行われています。ただし、個人であっても希望すれば現物受渡することもできます。商品先物市場はプロが対峙する市場ですので、売り値買い値とも非常に競争力のある価格で取引することができ、金(標準取引)や白金(標準取引)では個人による現受け(現物の受け取り)も実際に行われています。
近年は「商品(コモディティ)の時代」とも言われ、商品価格は国際的なスケールでダイナミックに変動しています。扱う商品の種類も色々あり、個人の方が普段の生活で身近に感じるもの、こだわりを持つ商品について、世界経済との関係を考えながら投資することもできます。そうした点でも商品先物取引は非常に面白い投資だと思います。
Q.商品取引は長い歴史と独特の面白さがありそうですが、一方でしつこい電話勧誘などを受けた経験から、悪いイメージを持っている個人投資家が多いと思います。こうした点についてはどうお考えでしょうか?
近年、業界の自主努力によりいわゆる迷惑勧誘については随分改善され、苦情は一時期より大幅に減ってきておりますし、さらに今回の商品先物取引法の成立で、一層投資家保護は進むと考えています。規制が強まることへの反発もありますが、これは他の金融商品も同様で、時代の流れという面もあります。従来型の対面営業スタイル主体にやってきた商品先物会社はビジネスモデルの転換をこれまで以上に迫られることになりそうですが、その一方で、すでに実績のあるネット証券やFX専業の大手などが新たに商品先物取引の仲介者として参加し、個人投資家を呼び込んでくれることも期待しています。
さらに、個人投資家の方には必ずしも商品先物取引に「直接的に」参加していただかなくとも、別の形で「間接的に」入っていただければよいと考えています。すなわち、商品先物を対象にしたETF、投資信託、CFDなどの商品を金融機関が開発して、証券会社などが証券口座を通じて提供してくれれば、結果的に我が国の商品市場の拡大につながり、東工取の市場の活性化につながります。現在、例えば金のETFは商品化されて東証、大証に上場していますが、いずれも海外金市場にリンクしたものです。東工取の金価格はあらかじめ日本人に馴染みやすいグラム当たりの価格ですので、これをベースにしたETFなどが商品化されればより親しみやすいでしょう。他にも東工取に上場する様々な商品全体の指数(日経・東工取商品指数)に連動したETFなどが証券取引所に上場されて、それを証券会社口座で売買できるようになれば個人の選択肢が増えます。それが間接的に東工取への資金流入につながります。金や商品指数など東工取ベースのETFはまだ存在しませんが、投資顧問業者などに働きかけを行っています。今回の新システム稼動を契機にそうした取り組みも加速し、今後色々なバリエーションの商品ETFが証券取引所で上場されて行くことを期待しています。
Q.その新システムについてもう少し教えてください。
この5月にナスダックOMX社製の世界最高性能の取引システムを導入しました。これにより、注文のレスポンス時間の短縮化(500ミリ秒→10ミリ秒)、夜間立会などが可能になりました。商品先物取引の国際標準的な取引制度に対応することが可能となりました。サーキット・ブレーカー制度という、固定的な制限値段幅と異なる制度を導入し、実質的に制限値段がなくなりました。また、マーケット・メイカー制度なども順次導入していきます。
初期費用と5年間の運営費で総額100億円近い大きな投資で、一株式会社としては負担も大きかったのですが、これを導入したことにより、システム面で海外取引所に見劣りしていたものを一気に世界トップレベルまで引き上げることができました。国内外の機関投資家などに十分アピールできるものになったと自負しています。アジアの中核的なデリバティブ取引所を目指すために必要なインフラ投資でした。
Q.上場を目指すということですが、その目的は何ですか?
昨年の株式会社化の目的は、第一に今回のシステム投資の資金調達でした。株式会社化に合わせて増資を実行しました。当社の株主は商品先物会社、日本経済新聞社、野村ホールディングスなどの金融機関、さらに総合商社など市場に関わる方々です。今後も継続的にシステム投資の必要はあり、その資金を調達するために、取引所自身の上場は必要だと考えており、2013年度の上場に向けて準備を進めています。そのために、まずは黒字化、収益の持続的拡大が必要です。今回の新システムで、東工取の戦闘能力は格段に高まりました。これをいかに最大限活用していくかが課題です。
Q.足元の環境としては、取引所は前期赤字、商品先物会社の経営も厳しいようです。商品先物市場自体が年々縮小していますが、これをいかに反転させられるのでしょうか?
2003年には過去最高の取引高を記録し、世界の商品取引所で2番目の大きさでしたが、それ以降、一時を除いて毎年取引所の取引高が縮小し、取引高に応じた定率参加料も減少、さらに商品先物から撤退する事業者が続き、各事業者から固定的に頂戴する定額参加料も減少しています。
しかし商品取引自体は、世界中でコモディティが注目を浴びて、取引が活性化しています。それにも関わらず、取引が縮小してきた要因は幾つかあります。個人については、業界の懸命な努力にも関わらず依然として過去のイメージを払拭するまでには至っていないということが挙げられると思います。また、株式や近年ではFXなどがネットで手軽に売買できる環境になり活況であるのに対して、商品先物は従来型の対面営業主体の事業者も多く、ビジネスモデルの転換に時間を要しているということもあるかもしれません。一方、実需家や機関投資家については、システムインフラやそれに伴う取引制度が国際標準と異なることが敬遠されていた点があります。
その点で今回のシステム稼動で、システム的なインフラの要因は解消されました。また、FXの例を見れば、個人投資家のニーズを満たす、あるいは新たなニーズを掘り起こすような努力をすれば、参加者を増やしていけるといえます。この点も、これまでの商品先物業界には欠けていた部分です。
システム更新に合わせて、新たに参加をしていただける事業者が見込まれます。彼らのマーケティング活動に期待します。取引所としてはシステムの安定運用、新たな上場商品作りでの魅力アップ、それに事業者と連携しての個人投資家向けの啓蒙活動などに取り組んでいきます。
東京工業品取引所 HP
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東京IPOスタッフ CFA協会認定証券アナリスト 深井浩史
コーヒーブレークのブログ書いています ⇒
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