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「アドバンス・レジデンス投資法人の公募増資」
某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん) |
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2010年6月11日 |
年々体力の衰えを感じるものの、草野球一試合分の守備をこなしただけで、両足とも吊ってしまった鰊です。ここまで来てしまったか…。
東京IPOの方々がフルマラソンを走っていることを考えると、真面目に体力を維持する方法を考えないと不味いなあと。
週末は2時間ほどジムで走っているのですが、やっぱり外を走らないと本当の体力はつかないようで。
さて、金曜日にアドバンス・レジデンスが公募増資で288億円(直近株価ベース)を調達することを発表しました。色んな意味で非常に興味深いケースです。
度々言及していることですが、REITは他の企業とは異なり、利益を設備投資や内部留保に回すことはできません。利益の90%を配当しなければ法人税が課税されるので、J−REIT市場が出来て以来、利益=配当が当たり前になっております。
極端な話、REITがREITたる所以は、不動産賃貸業に特化しているからではなく、この一定条件を満たした場合に法人税を払わなくて良い「規制」そのものだと言っても過言ではありません。
よって、REITが稼いだ利益を法人税を払ってまで内部留保や投資に回すことはなく、新たに物件を買ったり、負債を返済する場合には公募増資が必要になります。
リーマンショック以降、REITの株価がボロボロになった背景には、株式市場が崩壊→公募増資が難しくなる→財務の柔軟性を失う→さらに株価が下がる、というスパイラルから抜け出せなかったからです。
公募増資を成功させるということは、そのREITが株式市場から健全なREITであることを評価されていることを示すようなもの。
そういう風に株式市場から評価されて初めて、物件取得による規模拡大や有利子負債返済による財務状況の改善化を狙えるわけです。
ちなみに昨年下期以降、いくつかのREITが公募増資を成功させてきましたが、財閥系REITや不動産会社をスポンサーに持つ、ある程度実績のあるREITばかりでした。
その点、アドバンス・レジデンスの公募増資は伊藤忠という大企業をスポンサーに持つもののREIT市場からの評価はそれほど高いものではなく、ある意味試金石とも言えます。
もっと評価の低いREITは沢山ありますが、アドバンス・レジデンスがどの程度成功するかは非常に興味深いところです。
また、アドバンス・レジデンスの公募増資にはもう一つ意義があります。
それはM&Aを実現したREITを株式市場がどう評価するのかということ。
今までいくつかのREITがM&Aを実現させてきましたが、実は将来像をきっちり示したREITはありません。
ざっくりとした方向性は示したものの、ポートフォリオの全てが開示され、翌期の数字がある程度分かるのかと言われると、投資家の考え方一つで結構数字が変わるのが今の状況です。
アドバンス・レジデンスも最大の住宅REITである日本レジデンシャルを吸収して「小が大を飲み込む」形になったものの、合併後の詳細な財務諸表等は2011年1月期決算までお預けであり、物件の最新動向も他のREITに比べるとちょいと分かりにくい。
割安な水準で日本レジデンシャルを吸収したものの、負債比率が高いために公募増資を行うことは既定路線でしたが、今の状況でどこまで評価されるのか蓋を開けてみないと分かりません。
取得予定の物件や今回公募増資で調達する金額をみると、決して保守的な数値ではありません。むしろ既存株主から見るとギリギリ許容可能なレベル。
希薄化するのに配当額を下げなかったことが評価されるのか、もしくは配当金額は今がピークとして売りが出るのか、中期的に見れば高くはない水準ですが、株式市場の判断を待ちたいところです。
主幹事証券がみずほ証券、ドイツ証券ということで一抹の不安はあるのですが・・・。 |
某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
メールはこちら ⇒ nishin-for-t-ipo@hotmail.co.jp
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