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Tokyo IPO
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「日経平均株価で株式市場を語るリスク」
東京IPO編集長 西堀敬
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先週、株式市場は日経平均引値ベースでバブル後の最安値を付けた。日曜日の朝のテレビ番組は、どこもかしこもこのことを取り上げているものの、政府の対応の悪さを指摘するばかりで、議論は経済評論家の域を出ていない。(だからといって、私に名案があるわけではないが・・)資産デフレ(土地と株価の暴落)と産業の空洞化が急速に進みつつある今日において、メディアは世の中の暗い側面に目を向けがちである。番組の中で、年末に日経平均が8000円を割り込むことは必至、とまじめな顔をして話すゲストスピーカーに、一市民としての悲壮感に満ちた表情をうかがい知ることはできなかった。

メディアの議論が、常に日経平均ベースの株価で議論されているのを見るにつけ、東京IPOのサイトを運営している私としては、もう少し、別の視点でマーケットを見ることができないものかと考え込んでしまう。東京IPOが、IPOストラテジー会員向けに出しているレポートの中に、「5銘柄初値騰落率移動平均チャート」がある。このチャートを見る限りにおいては、チャートがマイナスの域に落ち込んできたのは夏場以降であるが、最近では、再びプラスに転じ、かろうじて、総崩れの状況にはならずに推移している。また、別の資料では、「IPO銘柄の一代足」と称する初値以降の株価の動きを表しているものがある。こちらのチャートをみると、初値をうまく切り抜けた銘柄でも、
多くは、その後に値を崩している。しかしながら、注目すべき点は、今年上場した100社近い銘柄のうち、三分の一の銘柄が、今なお、公募価格を上回る水準にあり、残りの銘柄も一部を除いて、日経平均の下げ幅以上に下落している銘柄が少ないという事実である。

メディアの報道では、証券税制の変更や日経平均の大幅な下落で、株式投資をする人が世の中からいなくなるのではという論調であるが、それでは株式市場に夢も希望もなくなってしまう。成長のために資金が必要な企業にまで、株式市場からの資金供給ができない状況は、今、まさに存在している。株式市場が常に総論として語られることにより、成長余地の大きい新興ベンチャー企業にまで、その影響が及ぶことに危惧を感ぜざるを得ない。年末に向けて、20銘柄近いIPOが予定されているが、読者の方々は目論見書を読み込み、新興企業への投資を通じて、また違った意味での日本経済の再生に貢献してみてはいかがだろうか。


東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com