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Tokyo IPO
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「IPO企業への投資には定性情報が重要」
東京IPO編集長 西堀敬
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読者の皆さんは投資対象企業を選択するとき、利益などの定量化された情報を重視し過ぎてはいないだろうか。IPO企業への投資を検討する際に、目論見書をよく読み込んでみても、過去の企業業績に関する数字の羅列である。目論見書には今期の予想売上・利益の数字などがないため、過去の業績ベースで株価の評価をせざるを得ない。また、IPO企業の中長期的な事業計画も見当たらないため、今後、企業の成長がどのようになるのかも知らされないままに、投資判断を迫られている。おまけに、アナリストレポートも読めないとなると、最悪の状態である。個人投資家は暗中模索状態で、主幹事証券会社とのプレヒアリングで株価を算出した機関投資家のプライシングを信用せざるを得ない。

上場時におけるIPO企業の開示制度そのものに問題があることも事実だが、IPO企業から直接情報を取れない個人投資家は、どのようにすればいいのだろうか。そんな時は、まず、インターネットを使って、会社のホームページを良く見てみよう。目論見書にはない情報が掲載されている場合もあるからだ。
企業によっては、創業時からの売上や利益を棒グラフやチャートなどで掲載しており、継続して売上・利益を出すことができるかどうかを確認できる。どのような事業でも継続性は重要だが、将来も存在し続けることができる企業かどうかを見極めるのに、重要な情報である。

さらに、経営理念・経営者のビジョンについても、掲載があれば読んでみよう。
そこには、経営者の事業に賭ける意欲、企業情報開示の姿勢、中長期的な目標が書かれていることもある。次に、インターネットの検索サイト(筆者お奨め
http://www.google.co.jp/)で、社長の名前・企業名を入力し、過去のメディアへの掲載記事なども探してみよう。その掲載記事の多さには、目を見張る企業がある。もちろん、良い話ばかりではないこともあるので、掲載記事の内容については、投資家自身の判断がより重要となってくる。

最近は、主幹事証券会社も上場準備を支援するという名目で、コンサルティングフィーを取って、目論見書のリスク情報などを、代筆に近いところまで支援しているケースも散見する。IPO企業が本音で伝えたい経営に関する情報を目論見書に書くことができない現行の制度では、アウトソーシングに走るIPO企業の気持ちも理解できなくもない。そんな状況を打開するには、社長がより多くの投資家に対し、直接語りかけることによって、その企業の魅力が増すことも、十分あり得る話しである。その最たる例が、数年前のソフトバンクの孫社長である。当時、同社がメディアをうまく使ったIR活動を行っていた事は、まだ読者の記憶に新しいはずである。

IPO企業は、各種のメディアをうまく使いこなして、より多くの投資家へのアクセスを増やすべきである。最近は、ブロードバンド化が進み、インターネットを使ったストリーミング放送も可能になってきた。手軽なツールとして、活用を検討していただきたいものである。投資家が投資企業の評価を行う際に、業績数字以外の定性情報も加味して判断をすることが、パフォーマンス向上につながるのではないだろうか。


東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com