今週は9件のIPOが予定されていて、年末だというのにIPOラッシュの週となる。このメルマガが出る前に、すでに1社が上場した。本日上場した平安レイサービスの初値は、805円と公募価格800円をやや上回る水準で決まったが、引値は公募価格割れとなった。
日経平均株価が先週まで8日間連続して下げる中において、IPO市場は意外と堅調である。その背景として、公募価格を低めに設定したことが大きな要因となっているのに間違いない。株価が堅調であるということは、投資家はそれだけ利益が出る、もしくは評価益があるということになる。つまり、証券会社にとって、投資家のベネフィットを考えたときに唯一推奨できるのが、新規公開株ということになる。このような株式市場の環境にあっても、次から次へと上場企業が生まれてくるのは、証券会社の営業戦略であるようにも思える。
個人投資家の立場になってみると、なんとかして新規公開株を取得したいという気持ちになるのは当然であろう。しかしながら、個人投資家が新規公開株を取得できる可能性は非常に少なく、機会不均等と思われているのではないだろうか。個人投資家へのアドバイスとして、新規公開株が取得できなかったからといって、割安に株価設定されている昨今のIPO銘柄への注目を止めてはいけない。
上場後に公募価格近辺で株価が推移していたら、改めてよく分析してみることである。上場後1週間から1ヶ月くらい過ぎた頃から、その企業の真価が株価に表れてくるのものであるが、環境が悪いだけに結構見直されないで、放置されている銘柄も数多く散見される。ここにチャンスがあると見たほうがよいだろう。
一方、IPO企業にとっては、資金調達がIPOの主たる目的になっていないのではないかと思われる調達額の企業が出てきている。IPOによって、企業の資金調達を間接金融から直接金融に変えられればいいが、実態はかけ離れている。では、銀行借入れよりも高いコストを払ってまで、上場するメリットはどこにあるのだろうか。財務上のメリットは、企業が銀行から借入れを実行する際に、オーナーや親会社の銀行保証がなくなることにあるようだ。この銀行保証が、日本の中小企業の成長を阻害する、とまで某大臣が発言していたが、とりわけオーナー経営者にとっては、重要なことである。次のメリットしては、上場企業というだけで、取引先の与信を受けられるという営業上のメリットが大きいようだ。
このように見ると、IPO企業の公募価格が低いことは、発行企業、投資家、証券会社の三者にとって、それなりのメリットがあるようだ。しかしながら、このままでは、夢もロマンもないIPO市場になってしまう。IPO企業の公募価格がすべからく保守的に評価されるのではなく、主幹事証券会社が自己の主観を大いに取り入れて、将来性まで織り込んだ、大胆な公募価格の設定が行われる日が来るのが待ち遠しい。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
|