今日は今年度の最終売買日となる。週末の日経新聞は、期末の株価を憂えんばかりの記事が目についた。このメルマガが読者に届く頃には決着がついているであろうが、日経新聞によると、今日の日経平均株価が8490円40銭以上で終わらないと、4ヶ月連続で月足が陰線となるらしい。また、今月が陰線だと、この12ヶ月間のうち9ヶ月間が陰線となり、このような状況は東証開所以来1963年の1度のみで40年ぶりとなるそうだ。一方で、株式投資へのインセンティブとなるイールドスプレッドが30年ぶりにマイナスになるほど株価は低い水準にある。
株式市場がこのように低迷していても庶民に危機感が共有されていないのはどのようなわけであろうか、と考え込んでしまう。1400兆円とも言われる個人金融資産のうち株式に投資されているのは投信を含めて全体の1割程度である。
その金融資産の1割が半分毀損したとしても、分母を100とすると5しか金融資産への影響は存在しないのである。米国では事情が異なり個人は金融資産の3割強を株式市場で直接運用しているため、もし仮に株価が半分になれば100分の15が無くなる計算となる。もし年金まで加えるとすると日本は2割、米国は6割強となりその差は3倍となり国民の意識は大きく違って当然である。
証券界は、個人金融資産の株式市場への取り込みによる株式の保有構造の転換に期待しているが、それを阻害しているのはまさしく個人の金融資産を運用している機関投資家や役人達である。個人金融資産の運用で代表的な年金基金の株式運用利回りがマイナスになったことを受けて、株式での運用を中止する動きもでてきている。10年単位で結果を求められている年金運用の世界で数年間の株価の動きでもって、その運用方針を変えるのはナンセンスな話だ。
自民党の某元幹事長が、100兆円分の株式を郵貯・簡保・日銀が買えばいい、と言ったそうである。100兆円はあまりにも多きすぎてピンとこない人もいるだろうが、郵貯の残高は235兆円、簡保の残高は196兆円だそうだ。
併せて400兆円はすべて個人の金融資産である。この資産を明日発足する日本郵政公社はどのように運用しているのであろうか。預けている国民に、郵便局に預けたお金はすべて国が保証してくれるから大丈夫という意識のもと、その運用先については気にもしない人がほとんどだと思われる。ところが、いまあちこちで大問題になっている国のプロジェクトに間接的にかなりの額が使われているのをご存知だろうか。
橋を架けたり、道路を作ったり、空港を整備したり・・・・それらの事業の収支はご存知のとおり大赤字だ。たぶん、株式投資をしているほうがまだましな結果が得られるのではないだろうか。これらのプロジェクトに関しては、収支内容が開示されていなかったり、仮にあったとしても一般の会計基準で作成されていなようなものばかりである。世界最大とも言われる日本郵政公社という資産運用機関には説明責任者が存在しないのである。
ならば、黙って、100兆円を株式市場に投入しても同じである。こちらのほうは、投資対象企業の財務内容は完全に開示されており、運用の最終責任を企業のトップに転嫁するこことも可能である。もちろん、そんなことが今日からできる訳は無いが、個人の金融資産の運用を委託されているお役所の役人たちは、自分達の立場だけを考えた近視眼的な調達と運用をするのではなく、預金者の立場で運用を考えて欲しいものだ。今後、政府が使うお金は国債と言う形で調達し、郵便局発行の通帳残高を増やすことによる調達はもうこの辺で止めていただきたいものである。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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