先週始まった日本企業の3月決算発表に株式市場は大きく揺れ動いる。過去最高の売上と経常利益を上げる見込みとなった日産のカルロスゴーン社長を賞賛する記事が新聞・雑誌を埋め尽くしている。しかしながら日産の株価のほうは材料出尽くしで一進一退となり足踏み状態である。一方では、そのゴーン社長が社外取締役に就任することになったソニーの株価は成長期待が剥げ落ち、25日、26日とストップ安で引けた。
証券会社系のシンクタンクは、中核となる上場企業の来期の経常利益が前期から16%UPと見ているようだ。マクロ的に見ると大手上場企業の企業価値は着実に回復しているのは間違いない事実である。時価会計・減損会計の導入もあり、経常利益以下の項目で最終利益が下ぶれする可能性は十分考えられるが、この3月期に大きな問題となった銀行株の持ち合いによる株式評価損の発生の影響は限定的と考えられる。先週、某上場企業のオーナー社長にお会いしたが、その人は、保有銀行株の簿価は、過去2年間の評価損の金額と比べて極端に低くなっており、最悪、ゼロになっても大した影響はない、と言い切られていた。
減損会計の方は事業上の資産なのだから他力本願な持ち合い株とは性格が異な
り企業はコントロール可能であるはずだ。
となると、業績ではない側面が株価に大きく影響しているのだと言えるのではないだろうか。つまり、以前から筆者が繰り返し書いてきたことだが、時価総額の大きな銘柄は機関投資家の行動に大きく左右されるのである。内外の機関投資家は、新興株式市場への投資を運用資産の10%未満にしているところがほとんどである。また、国内の大手投資信託運用会社は配当利回りファンドでの投資対象でさえ、東証1部上場銘柄に限定していると聞き及んでいる。要するに、新興市場は個人投資家とごく一部の機関投資家が参加する市場であり、年金資金などはほとんどと言っていいほど投資していない株式市場なのである。
つまり、今の株式市場は市場心理による需給で動いていると言っても過言ではない。年金の代行返上に伴う売りも4月に入ってそれほど出ていないという記事も見かける。時価総額が大きい企業であれば、大手銀行の持ち合い株解消は日本銀行の資産へと移動するはずである。そうなってくると、市場心理が今の最大のボトルネックということになるのではなかろうか。この裏を行く投資家の行動が3月上旬以降に見られる中小型株の賑わいを演出しているといえる。
日経JASDAQ平均は先週末まで9連騰を演じている。業績をベースに考えれば、業容の小さい企業ほど変化率は大きく、日経平均を構成する大手企業の業績回復よりも期待できる。
5月のIPOは今のところ2件のみであるが、東京IPOのサイトへのアクセス数は先週から多くなってきている。この土曜日には先週までのアクセスの2倍以上となった。今年上場した銘柄の中には、上場後のパフォーマンスの悪さから売り込まれている銘柄が多いが、前期決算と今期と業績予想の発表で見直され始めている可能性が大きいといえる。再度、企業の内容をチェックしようとする動きがあることをお伝えしておきたい。
今期上場銘柄一覧はこちらから ==> http://www.tokyoipo.com/iposche.phtml
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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