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Tokyo IPO
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「一般庶民にも効率的なアローケーションの機会を」
東京IPO編集長 西堀敬
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先週、日本経済の再生について議論するテレビ番組があった。その番組に視聴者として参加していた人たちの銀行に対する不満は銀行の経営者であればおそらく耳を覆いたくなるような内容のものであった。不満の中でも誰もが「そうだそうだ」と言いそうなものとして「銀行員の給料の高さと預金金利の低さ」を訴える人がいた。前者に関しては、個々の銀行の事情もあり一概に同一視できないので置いておくとして、後者に関して今日は考えてみたい。

四大銀行の定期預金の預金金利を各銀行のホームページで確認した。1年間の定期預金金利は預け入れ金額に関係なくどこも0.03%であった。YAHOOで調べると全国平均は0.036%、インターネット専業銀行においては0.1%〜0.5%と四大銀行に比べるといずれも高いどころか10倍以上の差がある。銀行はそれぞれコスト構造と運用方針が異なるため預金者への配分が異なるのはやむを得ないが、四大銀行が横並びで全国平均以下の最低水準の金利しか提供できないのでは経営の効率化に疑問が残るのは止むを得まい。とはいえ、100万円を1年間預金した場合の利息を一番金利が高いところで計算しても、税引き前で0.5%と、5000円にしかならない。高齢化した日本社会において、老後の為に貯蓄をしておいても取り崩すばかりで、預金利息は生活の足しにはならないのは事実である。

それに引き換え、株式の配当利回りはどうだろうか。東証1部上場企業の平均は1.18%、ジャスダック上場企業の平均は2.07%である。銀行預金の全国平均が0.036%であるから、単純に計算しても30〜50倍の開きがある。虎の子の預金を元本割れする可能性ある株式投資では運用できない、などということを郵政公社の総裁や厚生労働省の大臣が言うものだから、研究不足の一般庶民は恐れおののいて株式投資に躊躇するどころか、株式投資は悪の親玉のように考えられてしまい運用の対象から外れてしまうのである。それに加え、よく考えると地方には証券会社がほとんど存在しないのである。

全国津々浦々まで存在する郵便局でも投資信託や株式を購入できるようにすべきだという意見が昨年出てきた。郵貯のホームページをみると、貯蓄商品には「○○○貯金」と「国債」の2種類しかない。銀行に認可されている投資信託すら販売されていないのである。証券会社の存在しない地方においては、株式投資による配当利回りが預金よりも有利であったとしても、年金生活者のお年寄りたちの多くは、どこにいったら買えるのか見当がつかなのではないだろうか。

証券業務も免許制から登録制に変わって、証券ビジネスを始めやすくなったのは間違いないが、これは証券事業者の話であって、潜在的な株式投資家を掘り起こすことにはつながっていない。テレビでは株式配当利回りや外債などの話も出るが、実際に購入しようとすると「どこで?」となる。国民全員が、保有金融資産の効率的なアセットアローケーションができるような金融商品を全国どこででも購入できるような仕組みを構築することが急務と考える。そうすれば、国民の選択肢も広がり、預金一辺倒から株式に資金移動が起こるであろう。
また、先週のコラムでも書いたが、投資会社の銀行に資金が集中することもなくなり銀行経営者の悩みも一つは少なくなると考えられる。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com