先週の筆者のコラムで、国民全員が、保有金融資産の効率的なアセットアロケーションができるように金融商品を全国どこででも購入できるような仕組みを構築すべき、と書いた。今回は、国民がどのような金融商品を購入すべきなのかについて少し筆者の考えを述べたい。
国民の多くは、リスク資産への投資を嫌う傾向があると言われているが、そうとも限らないのではないだろうか。平成14年度から地方債計画において創設された「住民参加型ミニ市場公募債」については、平成15年1月末時点ですでに1200億円を超える発行があり、積極的に活用されている状況にある。さらに平成15年度においては地方債計画上2,600億円が計上されるなど、ますますその重要性は高まってきているらしい。
確かに、国債は国が、地方債は地方自治体が、元本や利子を保証しているが、実態はいずれも歳入不足に悩んでおり、企業会計に例えれば、営業キャッシュフローがマイナスと言ったところだろう。そのような財政状況であるにもかかわらず、「ミニ地方債」なるものは、金融機関の営業努力も必要なく住民が買いあさり瞬間蒸発するようだ。一例として、札幌市が昨年の夏に発行した3年物の債券の利率は0.16%で、一口100万円であった。昨年の夏ごろに、100万円を3年間定期預金した場合の金利は0.07%前後くらいなので約2倍のメリットがあると言えよう。
でも、銀行金利との比較において、住民が地方債を選択したとは思えない。昨年夏に札幌市が発行した20億円の市債の使途は、「札幌コンベンションセンター建設」と謳われている。つまり、プロジェクトファイナンスであり、センター建設の進捗は市民に常に監視されているわけである。元本や利息が戻ってこないことは言うに及ばないが、センター建設の遅延が起これば大きな問題となり、市長、市職員幹部および市会議員はその職を追われることになろう。企業に例えれば、コーポレートガバナンスが強烈に効いていることになる。
株式投資においても、身近な銘柄を選択するように薦める人がいるが、筆者は、株主が企業のコーポレートガバナンスに参加できるような企業への投資が望ましいと考える。銘柄選択の条件は、@本社が自分の住んでいる都道府県に存在する。A株主総会が自分の参加できる場所で開催される。B企業の提供する商品・サービス・店舗を常日頃から利用できる、ことが重要である。
たとえば、地方にだけ存在する、地銀、ホームセンター、スーパーマーケットなどは、経営そのものが地域社会に密接に関連しており、お客様が株主であれば、顧客のロイヤルティも向上し自らの事業の発展にもつながるというものだ。
都道府県別に○○○ファンドと称して、地元に関連する企業に投資する投資信託を設定し、1万円から投資できるようにする。そして、ファンドの所有者は、株主総会において、ファンドの運用者が投資先企業への質問ができるように事前に質問を集めておき、当該企業の株主総会にオブザーバーとして参加できるような仕組みをつくれば、○○○ファンドを購入する人も増えてくると思われる。また、郵便局でも投資信託を販売することを検討されているが、郵便局の店頭で、この類のファンドが販売されれば、札幌市の市債同様に瞬間蒸発する可能性は高いのではないだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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