6月24日、セイコーエプソンが上場した。当日の東京株式市場は、前日のニューヨークの反落を受けて軟調な滑り出しとなった。
筆者は、前日の引け後にブルームバーグTVに出演し、初値が3000円台になるだろうと予想した事もあり、寄り付きからセイコーエプソンとその類似企業の株価動向をウオッチしていた。朝方から時価総額の大きな銘柄が続落するなかにあって、セイコーエプソンは買い気配を切り上げていった。佳境は10時20分過ぎから初値の付くまでの5分間であった。筆者は某オンライン証券会社のカブボードに18銘柄を表示させて売買動向を見ていたが、突然売り買いの気配値や株価の変化を反映するフラッシュの仕組みが壊れたのかと思うほど静かになった。そして10時25分にセーコーエプソンが3690円で初値を付けた。この5分間は、市場に参加していた多くの投資家が、売買の気配値が切りあがっていくのを固唾を飲んで見守った瞬間であった。また同時にそれだけセイコーエプソンへの市場の注目が集まった証拠でもあった。
結果として、初値は3690円、2600円の公募価格から41.92%UPとなった。公募価格ベースの時価総額5000億円が一気に初値で7000億円となり、公募価格で株を買った投資家の懐には500億円近い含み益(一部の投資家は既に実現していると思われる)が一瞬にして転がり込んできた。
当日の引け値は3510円となり利益確定に動いた投資家の売りに押された。
それでは、今後の動向はどうなるであろうか。前週のコラムでも少し触れたが、過去2年間の大型IPO銘柄の動向を見てみると以下のようになっている。
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野村総研 |
日本マクドナルド |
大同生命 |
エプソン |
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(#4307) |
(#2702) |
(#8799) |
(#6724) |
公募価格 |
11,000 |
4,300 |
270,000 |
2,600 |
初値 |
14,850 |
4,700 |
320,000 |
3,690 |
1週間後 |
14,100 |
4,530 |
301,000 |
- |
1ヵ月後 |
15,300 |
3,850 |
347,000 |
- |
1年後 |
10,930 |
2,800 |
228,000 |
- |
本日(2003/6/30) |
9,250 |
1,970 |
260,000 |
3,570 |
3銘柄ともに共通しているのは、公募価格比で初値高、初値比で1週間後安である。上場から5営業日目の本日の引値までは、セイコーエプソンもまったく同様の動きとなった。先週の日経新聞の株式欄の中にあるコラム「まちかど」で、1ヵ月後が大事と書かれていたとおり、過去の3銘柄もちょうど1ヵ月後にバラツキが出てきている。このバラツキの背景を分析してみると、@どの銘柄もネットバブル崩壊後の下げ相場の中でのIPOで市場環境は決してよくなかった。Aファンダメンタルズを見ると、日本マクドナルドに関しては上場時から業績不安があった。B野村総研、大同生命は東証1部上場であったが、日本マクドナルドはJASDAQ上場であった。セイコーエプソンに関してみると、@は上昇相場、A今期業績は順調、B東証1部上場 となり、1ヵ月後の株価は野村総研、大同生命と同様に初値を上回る可能性が高い。やはり、東証一部上場銘柄ということで、最近大流行のインデックスファンドが買ってくることが予想され、しばらくの間、下値は限定的と見ることができる。
IPO銘柄投資をされている読者も、たまにはセカンダリーマーケットの世界でもリスクテイクされてはどうだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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