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Tokyo IPO
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「経営者・社員は、かく報われるべき〜大企業はキャッシュ、
  ベンチャー・事業再生企業はストックオプションで〜」
東京IPO編集長 西堀敬
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「ストックオプション」この言葉の持つ意義について議論すると、その立場によって全く異なった意見が出てくると思われる。元来、米国のハイテクベンチャーを支えるために始まった報酬制度であるが、成功したベンチャーの代名詞であるマイクロソフトが、従業員向けのストックオプションを廃止したのは、読者も記憶に新しいはずである。その一方、日本においては、昨年4月の商法改正を期に、一段と導入の熱が高まっている。

ストックオプションの制度面を見ると、米国ではストックオプションを人件費として計上する必要が出てきているが、日本の現行の会計制度では費用計上する必要がない。このように、米国のインセンティブ制度が遅まきながら日本へも導入されてきたものの、会計上の処理については問題を残しており、社員の成果への報い方として適切な方法であるか否かの議論は残る。週末の日経新聞でも「ストックオプションの功罪」というテーマのコラムがあった。その中でも、米国内での議論について企業名を上げながら解説されていたが、筆者の個人的な見解としては、株価上昇によるメリットを大企業の経営者が享受するのには抵抗を感じざるを得ない。

ストックオプションは、どのような企業でも有効に機能するとは限らない、と筆者は考えている。ストックオプションの意義について語る際に、その前提条件が必要となるはずである。この3月期決算企業のうち、6月の総会で約350社が導入の議案を提出したと報じられている。上場企業と言えば、それなりに役員・社員は安定した収入を得られるのが常識である。また、時価総額の大きな企業の役員・社員は、たとえ株価が上昇しても、それは付与者が業績に貢献したためなのか、それとも株価が極端に過小評価されていて偶然この時期に付与されたストックオプションに価値が生まれたのかはっきりしないケースも多々あるはずだ。現金給与にも恵まれる大企業の人間に対して、ノーリスクでキャピタルゲインが得られる仕組みを株主が認めるのには疑問を持たざるを得ない。
筆者が株主として認められる状況にある対象企業として挙げるならば、上場を視野に入れて成長を加速させるステージにある企業、最近注目を浴びている事業再生中の企業である。これらの企業は、社員への現金給与を抑える等の理由で、世間並みの現金給与の支払いができないはずであるから、社員のモチベーションアップとインセンティブの為にストックオプションを付与することは非常に有効に機能すると考える。そして、付与された社員が業績に貢献すれば、間違いなくそれはIPOや株価上昇という目に見える形で結果が出るはずだ。
前述の約350社の経営陣は、株主総会に議案を提案すれば必ず承認されると考えたのであろうが、この場合、誰がどれだけのキャピタルゲインを得たのかが非常に不透明である。キャッシュによる報酬の開示を求められるからと言って安易な方向に向かうのはいかがなものだろうか。大企業の経営者は、業績が上がれば、正々堂々と現金で報酬を得るべきだ。また、メディアも株主も日本人特有の「妬み、嫉み」の世界に持ち込まずに、それだけの報酬を得る働きをした彼らに賛辞を送るべきである。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com