先週、NECシステムテクノロジーの上場承認があった。同社はNECの子会社で、今年に入ってNECグループ会社としては2社目の上場となる。
日本のエレクトロニクス事業を営む会社は総じて子会社を上場させる方針があるのか、調べてみると相当数の子会社を上場させている。参考までに日立、NEC、富士通の3社を取り上げると以下のような状況である。なんと、子会社の時価総額の総和が親会社を上回っている企業体すら存在する始末である(NTTなどもそうである)。
社名 本体時価総額 上場子会社数 子会社時価総額 時価総額合計
日立製作所 1兆7009億円 22社 1兆9461億円 3兆6470億円
NEC 1兆2388億円 10社 1兆2681億円 2兆5069億円
富士通 9669億円 10社 3899億円 1兆3568億円
※子会社は有価証券報告書ベースの連結対象子会社と孫会社を含めた。
(時価総額は2003年8月11日終値で算出)
一方、子会社の上場を取りやめて株式市場の価値が親会社1社に集約する動きも加速しており、その代表例はソニーである。ソニーは一昨年上場子会社のアイワを株式交換により完全子会社化を実施してグループで上場しているのはソニー1社のみとした。因みに、ソニーの時価総額は1社で3兆2976億円(8月11日終値ベース)である。
筆者が子会社上場に関するコラムを書くにあたり、週末に情報収集をしている中で、日経新聞の日曜版に「グループ戦略 日立の模索」というコラムがあった。いみじくも筆者と考えが同じ部分が多いので、引用させていただくと、「上場子会社の重要情報を親会社の日立がつかめても、それをほかのグループ企業に安易に知らせるわけにはいかない。(日立幹部)」とある。確かに親会社は単なる株主もしくは投資家という立場ではなく、グループ企業の経営資源を最大限共有化し、それを有効に使うことによって、グループの企業価値を上げることにその使命があるはずだ。しかしながら、上場子会社にはそれぞれの株主もいるわけで、経営情報を親会社や関連会社にのみ提供するわけにはいかない事情もあるはずだ。そうなってくると、子会社だからといってヒト・モノ・カネを親会社が自由自在に動かすことはできなくなって、手かせ足かせの中でグループ企業経営を強いられることになってくる。
しかしながら、上場している子会社のほうにどこまで独立意識があるのかという問題も一方では出てくる。冒頭に紹介したNECシステムテクノロジーと7月に上場したNECエレクトロニクスの両社は元NECの取締役が代表を勤めている。このように子会社に親会社の方を向いて仕事をする経営者を配置して株式市場という荒波に子会社を旅立たせるわけであるから上場子会社を任される親会社のOBも大変である。子会社の経営者にしてみれば、51%超を保有する1名の大株主の利益の最大化を図れば、他の株主の利益にもつながると考えているかもしれないが、株式市場はそうは考えていないようである。上場子会社の時価総額は、総じて同業他社に比べると割安に評価されているケースが多いようである。投資家にしてみれば、ソニーにように親会社の裁量で、突然、合併されて上場廃止になったり、経営者が常に親会社から派遣されていて独自の戦略を持たなかったりするような上場子会社の株式を保有したくないのは当然のことである。
このような矛盾を解決するひとつの方法として、筆者から提案したいことがある。子会社を上場させる場合は、常勤取締役の半数以上をグループ企業外から招くと同時に、親会社の次の大株主として機関投資家に2〜3割程度の保有してもらって、経営者が投資家である株主の利益を考える経営ができる仕組みを導入していただきたい。 上場子会社の経営者が、市場のプレッシャーに打ち勝つには、社内でもプレッシャーを日々感じながら経営に臨むことが重要である。そうすることによって親会社から派遣された経営者であっても市場に信頼される強い経営者に変わることができるはずである。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
|