日経平均は先週一時的に1万円を回復した。この相場を演出したのは誰なのか?という答えは、今週木曜日に東証が発表する投資家主体別売買代金で明らかになる。8月第1週の投資家の動き(金曜日の日経新聞参照)を見ると、下げ相場の中で、信託銀行の売りが多く、これは厚生年金基金の代行返上の為の売却は着々と進んでいることを意味している。
株式市場は、年初から需給を懸念した相場展開を繰り広げてきた。着々と売り続けているのが年金基金と銀行である。銀行はビジネス上のルールに従って運用サイドの市場リスクを限定するためにある水準までは売り続けるであろうし、今後、株式運用を増やすことはないであろう。しかし年金基金はどうであろうか。代行返上によって売られた株式は、再び、年金資金運用基金の名の下に買われることになりそうである。代行返上により国に納付された資産のうち、株式や債券といった現物で納付された部分は積立金として運用されるが、現金で納付された部分はすぐには積立金にならず、国の厚生年金の歳入となるらしい。
そして年金勘定の資金繰りを経たうえで残余となれば新規に積立金となり、翌年度に市場運用などの原資となる。
このように代行返上により市場で売却された株式がいったん現金になって再び株式市場に還流する可能性があるわけだ。この一連の流れが起こるとすると、年金資金がどれだけの損失を被るのかの計算についてはアナリスト諸氏にその任を譲るとして、単純に考えてみても、春先から売りつづけていればこの間の上げ相場の恩恵を被っていない年金基金が多いはずである。返上された現金が、来年以降、再び株式に投資されるときに仮に日経平均が1万円を越す水準になっていたとしたら、代行返上される為に売られると言われている4.6兆円の運用資金は、この間の上げ相場での投資機会損失を起こすことになりはしないだろうか。
つまり、来年春以降の株式市場の需給は攻守逆転が起こるわけだ。4兆円を越す売り手が、4兆円を越す買い手に変身してしまうわけだから、年金資金による買いによるステップアップ相場になっていくことは間違いないだろう。そこに銀行の不良債権処理の目途が立ってくれば来年こそ大相場を迎える環境が整ってくる。株式市場は常に先読みして動くわけだから、この夏に始まった相場は秋になっても腰折れすることなく持続しそうである。
とは言え、例年なら暑さ真っ盛りの中でのお盆休みであるこの時期に10月上旬の気候になってしまった異常気象の中にあって、先週の相場は「真夏の夜の夢」であったような気がしないでもない。筆者の杞憂に終わればいいのだが・・・・。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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