最近、「ターン・アラウンド(企業再生)」なる言葉がメディアを賑わせている。先週の金曜日の夕刻に企業再生に係わる人々が集まる会合が青山で開催され、企業再生の実務家と企業再生ファンド運営者を併せて約200名が結集し盛況のうちに終了した。主催したのはデルタウィンCFOパートナーズ(http://www.deltawin.com/)という企業再生ファンドが投資している再生中の企業にCFOを紹介・派遣するヘッドハンティング企業である。数年前には、ビットバレーと呼ばれた渋谷近辺で、ITベンチャーの経営者とベンチャーキャピタルの集まりが頻繁に開催されていたことを思い出す人多くいるだろう。時が過ぎても参加者は類似した集まりであり、当時のベンチャーキャピタリスト達は、数年の時を経た今再生ファンド運営者としてそこにいた。
銀行の不良債権の処理に絡んで、産業再生機構が今年から動き始め、すでにいくつかの具体的な企業名がメディアでも報道されている。不良債権を保有する銀行はすでに貸し倒れ引当済みの債権を譲渡するわけであるから、今度は税務メリットも取れる形で処理が可能となるわけだ。しかしながら、債務を譲渡された企業のほうは、ファンドの経営という地獄が待ち受けている。いっそのこと死なせてくれた(企業破綻させてくれた)ほうが楽だったのにと考える再生企業の管理職・社員も多くいるのではないだろうか?
青山の会合で、企業再生の現場を指導するコンサルタント企業の代表者の話を聞いてみて不振企業が陥る罠が共通して存在していることを改めて思い知った。
筆者が日頃お会いしている新規上場企業の中にはありえないような社員の悪しき習慣や負け組根性(マインド)がそこには存在しているのである。企業再建には資金や戦略が必要であることはいうまでもないことであるが、人のマインドを変えることによって、人は実行力を強め、その結果、企業は大きく変わっていくことができる、というのである。経営の極意とは、IPOするベンチャー企業も再生中の企業もまったく同じで、経営者も社員も常に爪先立ちで歩き続けることであるようだ。高い目標を掲げ、自らが限界だと思っていたハードルを超えたときに「成功」の二文字が存在する。
最近の株高を支える企業の業績回復は、リストラなどのジョブレス・リカバリーの側面が大きい。このような不安定な雇用情勢をみるにつけ、手放しで喜べないという政治家やエコノミストもいるが、マクロ的には人材のミスマッチを修正する大きなチャンスであり、企業再生の動きは、長年の負け組根性に支配されていた人々に、働く喜びと生きがいをもう一度味わってもらえる機会を提供することであろう。社員にとって、そこには非常に厳しい現実が存在しているのが事実ではあるが、政治家やメディアが陰口をたたくほど企業再生ファンドは捨てたものではないはずだ。外資であれ、日系であれ、今後、企業再生に資金を投入するファンド運営者への期待は大きく、数年後には東京IPOのサイトを賑わせるような復活企業が出てくることを期待したい。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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