9月20日、小泉総理がぶっちぎりで自民党の総裁に再選された。自民党の古参政治家の奮闘も虚しく総裁選が近づくにつれて小泉再選のムードは高まり、結局、蓋を開けてみれば、議員票こそ派閥の力学に押されて割れたものの、地方は今度も小泉氏を応援した。総裁対抗馬の候補は、地方の不景気を改善するために公共投資を実施する公約を掲げたが、地方は小泉氏に味方した。国民は従来の中央官庁主導のばら撒き型の公共事業は自らの利益にならないことを悟っていたのである。11月に予定されている衆議院議員選挙は、マニフェスト(政権公約)を競う自民党と民主党の一騎打ちになりそうだ。果たして、両党が掲げる公約は日本を救うのだろうか。
小泉内閣総理大臣の所信表明を読んでみると、小さな政府を目指しているよう見える。小泉首相の唱える「構造改革」とは、「民間にできることは民間に」「地方にできることは地方に」とはじめに謳われているように、政府は構造つまり仕組みの構築を行うが実践は国民の皆さんがやってください、ということだ。
一方の民主党はどうだろうか。民主党のホームページに「マニフェスト」の掲載があり、最優先課題は、「強い経済の再生に取り組み、景気回復と雇用安定」とある。項目としては、景気を回復させ仕事と雇用を生み出す、お金の貸せる銀行を作る、税金の使い道を見直し財源を確保する。その実現のために経済再生5カ年計画と財政再建プランを策定するとある。要するに民主党のほうは、現状分析しただけの話である。
筆者は、両党の公約には含まれていないものに、「外資の積極導入」があると考える。いち早くビッグバンで開放された金融分野においては、多くの外資系金融機関が日本に市場で活躍している。実体経済の分野においても、外資系のファンドが企業再生の分野での活躍を始めている。とは言え、資金の源泉をみると日本企業も外資系が運用する再生ファンドに多くを出資しているようだ。
このことの意味するところは、日本人の知恵と経験だけでは、日本を再生することは非常に難しいということの裏返しであるようにも見える。政治家の中には外国資本を忌み嫌う人も多いが、資本が入ることが彼らの保有する知恵と経験を取得することにつながることを忘れているのではないだろうか。
内需拡大による経済再生や日本人としての尊厳を再確認することも重要かもしれないが、輸出頼みの日本経済が世界の中で生き残っていくことがでるとしたら、我々がグローバルな視点を持ち、世界の動きの中で如何に自分たちが他国(他企業)よりも早く変化することが重要であるかを国民に認知させることが肝要ではないだろうか。戦後の繁栄を成し遂げた価値観は今や成熟した日本国にはそぐわないはずである。今までの日本は、世の中に勝ち組と負け組をつくらない、都市と地方の格差を物質的な面で是正する、国が国民の安心(安全ではないので注意)を創造する等々の価値観があった。この価値観こそが今の日本の成長を阻害しているように筆者は思う。外資の運営する企業再生の手法は、従来の価値観や社員の行動様式を改めるところから入るらしい。それが受け入れられない現場の人々は職を失う。失職者は外資に職を奪われたと考えるのではなく、変われない自分が自らを窮地に追い込んだと考えるべきである。
今日の政治のリーダーには求められているのは、日本人が変われるための新しい価値観の構築ではないだろうか。そこが完全に抜けているマニフェストには日本再生の道標は存在しないように思う。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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