先週金曜日に、昨年の12月に上場延期となった、イーアクセスが上場した。
初値は25万円と、非常に好調な出だしとなった。また、大引けにかけて買い 物が殺到し5千株以上の買い物を残したようだ。今日も寄り付きから高く、後
場にストップ高となり大引けで4500株の買いものを残している。
同社は当初6ヶ月間はロックアップ契約により機関投資家も売却できないため、 好調な株式市場に支えられて堅調に推移するのではないだろうか。バリエーシ
ョンを見ると、今日の引値ベースの時価総額で818億円、今期の売上予想が 383億円であるから、売上の成長から見るとPSR2.1倍であり、上場通信会
社の水準からすると、来期以降の成長まで織り込んだ株価といえる。一方で、千本社長は、2006年3月期には140億円の累損解消、と発言されている。
これが実現すれば、来期は100億円超の経常利益が期待できることになり、PERで買える銘柄となる。そうなると、今日の時価総額も割高とは言えない可能性も十分ありうる。
それでは、IPOマーケットの動向を見ていこう。
(図1参照:http://www.tokyoipo.co.jp/1006data.htm)
今年のIPOの件数と市場調達額を見てみると、今年の新規上場は、9月までで 82件と昨年の86件とほぼ同じ件数となっている。内訳を見ると、昨年はナスダックジャパンだけで年間23社上場したが、今年はNJにとってかわったヘ
ラクレスが4件にとどまっている。その代わりに東証マザーズでの上場が18 社となった。また、調達額で見ると、今年は9月まで昨年1年間の4450億
円を越して4590億円の調達額となっている。6月のセイコーエプソン(6 724・東1)、7月のNECエレクトロニクス(6723・東1)の2社で260
0億円を調達しているので、その他のIPO銘柄の調達額は非常に小さくなって いる。今年も余すところ3ヶ月となったが、昨年同様に年末にかけて30社以
上がIPOしてくると予想される。
次に最近のIPO銘柄の初値推移について見てみる。
(図2参照:http://www.tokyoipo.co.jp/1006data.htm)
当社で作成している初値当落率の5銘柄移動平均を見ると、6月12日と9月 19日に山になっている。6月中旬は情報企画が3.3倍、ゲンキー(2772
・JQ)が2.8倍、ハーバー研究所(4925・JQ)が3倍、ネットマークス (3713・東2)が4倍となり移動平均でもおよそ3倍付近まで過熱した。そ
の後、9月に中旬にウィンテスト(6721・マザ)が3倍、コメ兵(2780・ JQ)が2.8倍、NECシステムテクノロジー(3717・東1)が1.8倍となり、
移動平均で2.3倍となった。
次に、このように初値の動きと、マーケット全体の動きとの関連を見てみる。 (図3参照:http://www.tokyoipo.co.jp/1006data.htm)
日経平均は4月に年初来安値を付け、その後の高値の最初は7月10日、次が9月19日で、IPO市場のほうはそれに先駆けて、高値を付けている。チャートと
出来高を見るとよくわかるが、日経平均が高値をつけに行く過程で市場が加熱 し、その勢いでIPO銘柄の初値パフォーマンスが高くなっていると見える。
次に、上場後のセカンダリーマーケットについてみてみる。
(図4参照:http://www.tokyoipo.co.jp/1006data.htm)
青線が初値騰落率、赤線は初値から上場日から5営業日目の株価の騰落率の5 銘柄移動平均である。6月の初値が3倍になった銘柄は、その直後に初値割れ
を起しているのがわかる。9月も同様に初値を少し割り込んでいる。一方、初 値が公募価格割れを起している銘柄については、その後初値を上回っている。
次のグラフ(図5参照:http://www.tokyoipo.co.jp/1006data.htm)
を見るともっと顕著にそれが表れている。緑の線は、上場日から1ヶ月目の株 価の騰落率の5銘柄移動平均である。赤丸がついているところを見ると、初値
が公募価格を割った銘柄のセカンダリーマーケットの動きは非常に堅調である ことが窺い知れる。ここ1ヶ月間の動きとしては、9月17日以降は初値がさ
ほど高くないので半分以上の銘柄が初値以上の株価で推移している。
公募・売出し株を取得できなかった投資家もセカンダリーマーケットでIPO銘柄 投資をするチャンスはある。IPO銘柄にセカンダリーマーケットで投資するとき
は、初値が公募価格の2倍、3倍となった銘柄は要注意である。一方、公募価 格割れになったらチャンスと考えるべきである。新規上場時の初値は必ずしも
ファンダメンタルズを反映した株価になっていない為、市場全体のセンチメン トで株価が決まってくる。
東京IPOでは、すべてのIPO銘柄の初値騰落率を見られるようにしているので、 読者が日々の初値騰落率をチェックして投資の参考とされたい。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com |