データをどう解釈するか、は読み手の勝手だから気が楽だ。12月中旬に日銀が公表した資金循環統計速報によれば、昨年7〜9月に家計は株式を3,248億円も売り越したという。その前の3ヵ月よりも売り越しが増え、2四半期連続の売り越しなので、家計はリスク回避型の運用に動いている、と新聞では報道されている。まして、株価の上昇局面においておや、と。
別段、家計はそんなに深い考えがあって投資行動を決めている訳でもあるまい。課税制度が変わるので、一旦は手仕舞いしておこうと思っていたところへ、株価が戻る展開になったので、ヤレヤレと売り、損を回避して現金化できたので一安心、程度の思いでいるのではないと、と筆者は解釈する。
そうでなければ説明がつかないことがあるからだ。IPO市場の人気化だ。昨年の12月に、新規公開企業数が急増した。「専門家」の意見として、同じ新聞紙上で散見された意見は、需給悪化によって株価が下がるだろうというものだった。
結果をみれば、ジャスダック指数は67.31から67.51へと下げず、ジャスダック指数は1391.34から1417.04へと上昇した。確かに、日経平均が同じ期間に2.6%上昇したのと比較すれば、1.8%の上昇は小さい。だが、「下がる」というのが多数派の見方だったのだとすれば、上がり方がこそ小さかったものの、上昇は暴騰を意味しているのかも知れない。
この暴騰を支えたのは新規公開銘柄だ。公募価格と初値を比較した初値倍率は
、12月の平均が1.79、11月が1.32だったので、「供給過多」のはずだった12月の方が人気は高かった。これまでの経験からも、新規公開増加時の方が、株価は人気づく事が多い。この結果、5社移動平均で見た初値は1.8倍水準で推移している。さらに長期の、例えば初値倍率の20社移動をとれば、10年債利回りと連動しているのが分かる。
ということは、景気動向を反映しているはずの長期債利回りが1%割れしないとの前提に立てば、IPO人気が急速に失速することはない。なおも、新規公開株物色は続く。IPO市場は投資主体の構成比から見れば個人の市場。リスクを回避しているはずの個人は株への関心を高めている。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)
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