2月3日に名古屋証券取引所セントレックス市場に上場した「やすらぎ」の須田社長にお話をお伺いした。
1990年のバブル崩壊以降、株価・土地ともに、その価格はみごとなまでの右肩下がりが続いている。日本人は元来農耕型民族ということもあり土地に対する執着の高い人種である。そのことが不幸にも土地神話なるものを生み出し、その結果としてバブル崩壊によって企業ばかりか個人までもが手持ちの土地を手放さなければいけないような事態を招いてしまっている。個人の場合を考えてみると、戦後から1990年のバブル崩壊までの間、先祖代々の土地持ちの人を除けば、誰もが簡単に土地付き一戸建ての我が家をもつことはできなかった時代が長く続いた。にもかかわらず、無理をして我が家をもった人々が自宅を手放しつつあるのが今日だ。そこに目をつけたのが「やすらぎ」の須田社長である。
須田社長率いるの「やすらぎ」は群馬県桐生市に本社を置く不動産業者である。現在の中古住宅再生事業を始めたのは、平成10年の民事執行法改正に端を発する。そのビジネスモデルは非常にシンプルで、一戸建て住宅の競売物件を落札し、リフォームして販売するというものだ。
しかしながら、このビジネスが成り立つには法改正がどうしても必要であった。競売物件と言えば、住人の立ち退き問題や、第三者が占拠しているのではないかという非常に暗いイメージがある。そのようなトラブルを民事執行法改正により裁判所の執行官が替わって処理してくれる仕組みができあがったのである。
須田社長は、自らの本でも語っているように、創業以来一度の赤字も計上していない。もちろん、不動産のプロであることは間違いないであろうが、バブル崩壊後はたとえ群馬といえども経営が厳しいときはあったに違い無い。社長の経営スタイルについて聞いてみると、顧客のためにならない費用は一切発生させない、と言う。逸話として、夏場でもクーラーを事務所に入れていなかった
という。事務所にクーラーがあっても、商品である家は屋外にあり、顧客が物件をみるのに空調など必要ないとうことだ。このように徹底したコスト意識をもって経営を行ってきた。
須田社長は、法改正を機に全国展開を行うことを決するが、粗利のさほど大きくない中古物件を扱うのに不動産業の経験者を採用していては採算が取れないと考え、未経験者でも事業ができるようにマニュアルを作成した。そこで採用したのは、不動産、営業、建築、競売に関する知識も経験も全くない主婦であった。その主婦の社員を武装させるのが、「仕入れのPOS」と呼ばれる人のノウハウをソフト化したシステムだ。土地の広さ、建坪、築年数、建築方法などを入力すると最低販売価格が計算され、また、入札価格毎に落札の可能性(確率)まで算出できるという。ここまでシステム化することにより、素人でもプロの不動産屋として活躍できる人材にしてしまうのだ。その結果、主婦の社員が、大手ハウスメーカーの営業マンの4倍の物件数を売っているのである。ただし、首都圏は競争が激しいと考え、地方を獲ってから、上京する戦略をとっている。
須田社長は、15−6年前の消費者金融業にたとえて当社の置かれた環境を説明する。要するにまだまだ社会的なイメージは良くない。同社のビジネスは競売に参加するだけでも資金負担が発生するが、さらに、落札し、リフォームして販売して回収するまでに約6ヶ月の資金繰りが必要となる。ビジネスを伸ばすには何をおいても資金が必要なのである。しかし、今回のIPOによって、
社会的な認知度が向上し、銀行からの融資の申し出も増え、同社のネックとなっていた資金繰りを改善させ、事業拡大を強烈にサポートすることになろう。現在、全国規模で競合となっている会社は全くいないと言う。ただし、本当にこのビジネスの意味がわかってくれば大手の不動産会社が参入してくる日がくるに違いないという。
同社の今後の事業展開であるが、須田社長の目標は、5年で売上1200〜1300億円を達成し税引き後の利益ベースで100億円を目指すそうだ。今回のIPOで株式市場からの資金を調達するだけでなく、銀行からの調達も容易になり現在の借り入れ金利も半分になりそうだ。また、今回の上場で株主になってくれた方々には、内部留保につとめるので配当はしばらく見送るが、事業の成長による株主価値の向上(株価)で報いたい、とのことである。
最後に、なぜ須田社長にこのビジネスを続けるのか?と聞いたところ、バブルの時代に家が買えなかった人に土地付き一戸建ての家を提供したいそうだ。年収300−400万円の年収でも、自宅の駐車場に1500CCの車があって、家族団欒できるようなスペースのある家を提供するのが理想とのこと。デフレの時代を生きる一般庶民にとっては、やすらぎ様様ではないだろうか。
株式会社やすらぎのHPはこちら⇒ http://www.yasuragi-reform.com
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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