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「投資を考えるシリーズ 〜2.本物の投資家になるために」
株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎 

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前回は、自らが行っている株式投資が投機的であるのか本物の投資であるのかとの違いとぞの重要性について述べた。今回は、本物の投資家になるための具体的な鍵について解説したく思う。

経済学的に投資を見た場合、投資とは生産者の実物資本の増加分であるという見方ができる。この考え方は、まさに会社は誰のものかというコーポレートガバナンスの問題にも繋がっている。「会社は、株主のものである」という考え方は、経済学的に明らかに正しい。会社は、経営者のものでも従業員のものでもなく明らかに株主のものなのだ。株主は、それぞれの持分に応じた株主権を有し、まさしく英語でいうShareholder として、その企業の正味財産をシェアしてホールドしているわけである。投資家は、投資を実行することによって株主たる地位も手に入れることになるわけであり、したがって株主=投資家ではない。株主は、その企業のシェアをホールドしているだけであって、特に利益を得る目的だけで株式を保有しているわけではない。企業間においては、事業提携に伴う企業支配的な意味合いもあれば、長年我が国で行われている持合いなども経営者間の経営権の絶対的安定が真の目的である。個人が株主になる理由も決して利益を得る目的だけではなく、株主として問題を提起する場合やはたまた環境に優しい企業を応援するなど直接の利益とは関係のないところで株主になる場合もある。

投資は、英語でいうINVESTMENTであり、当然ながら投下資本に対する利益の追求が目的であり、その尺度としてはROI(Return On Investment:投資収益率)が重要となる。しかし、株式投資で高パフォーマンスを達成するためには、単に資本を投下するだけでは、かなりの確率で成功は望めないと知るべきであろう。実際、単に資本を投下する(株式を買う)というだけでは、その行為そのものが投機か投資かはほとんど区別がつかない。一説では、期間をもって中長期は投資、短期は投機とする場合もあるようだが、かなり乱暴なくくり方である。大体、どの時点で短期と長期で分けるのか、よくあるようにワンイヤーで区分けをするとしてもおよそ根拠がない議論である。投資の世界において、重要なのはいかに高パフォーマンスを上げるかという具体的投資手法であり、その手法を実行し、達成できたものが本物のINVESTOR(投資家)といえるのではないだろうか。

私が考えるに本物の投資家とは、その目的達成のために、投資対象を綿密に調査し、その将来性を予測し、資本投下後も、投下した企業を常時ウォッチし、あるときは積極的に経営者に語りかけ、株主として企業の成長にアクティブに貢献することを実行する人物である。こうした本物の投資家になるための鍵を握るのが IR(Investor Relations)活動である。IRといえば企業から投資家に対して企業PRするワンウェイ的な活動と誤解している方々もいるが、それは間違いである。IRとは企業経営者と投資家が双方向に積極的に語り合い、相互に信頼しあって、投資家サイドからも積極的に企業の成長に結びつくヒントを投げかけるツーウェイの活動なのである。したがって投資家にとってIRとは極めて重要なファクターであることを改めて認識してほしい。こうしたしっかりとした視点と信念を持ち、じっくりと将来を見据えて投資を行うものが証券市場において打ち勝つことができる真の投資家なのではないかと私は考えている。次号では、実際にどのような手法をもって株式投資を行うのがベターなのか個人投資家の視点を中心に過去の事例等も交えて解説していきたいと思う。

株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
            (証券アナリスト・IRコンサルタント)

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