2月27日、JASDAQに新規上場した東誠不動産(証券コード8923)の山口社長にお話しをお伺いした。
東誠不動産の株価は初値が45万円で騰落率87.50%、当日は4銘柄(東誠不動産の他に、日本ケアサプライ、ネクサスが上場。セキュアード・キャピタル・ジャパン(2392・マザ)は、買い気配で寄り付かずだった)が上場したが、その中ではまずまずのパフォーマンスとなった。
東京都内を歩いていると、なぜこんなところにマンションが?ホテルが?商業施設が?と思うときがある。所詮は他人の住空間だからと、あまり深く考えずにその場を去ってしまうのではないだろうか。その建物の用途とロケーションには密接な関係があることを我々は忘れてはいないだろうか? 従前、駅前の一等地は商業施設やホテルなどの人が集まる場所に相応しい建物が立つのが当然であった。しかしながら、諸々の条件を考慮すると必ずしも相応しい場所とはいえない場合も多く出てきているのも確かである。我々の固定観念に基づいて駅前などの建物の配置は決められていたのではないだろうか? そのような固定観念を打ち破り、自らを「不動産の価値再生ポートフォリオ・マネージャー」と呼び、東京都区部にある不動産の所有者・利用者のニーズに合う不動産に再生する「都市再生」事業を行っているのが東誠不動産である。
東誠不動産は、「住環境創造(開発分譲)事業」「ビジネス環境支援(賃貸)事業」「不動産流動化事業」という3つの事業ドメインを持っている。 それぞれの事業は、エンドユーザーに付加価値の高い都市型マンション・戸建住宅を一貫体制で供給する「住環境創造(開発分譲)事業」、利用者の利便性・機能性を最優先したオフィス・住居を賃貸する「賃貸事業」、投資家向けに再生プランを施した不動産及び新築の不動産を供給するトレーディングビジネスと、当社オリジナル不動産ファンドの組成・運営、ファンド組成・運営ノウハウの提供及び投資家への物件紹介等を行うフィービジネスからなる「不動産流動化事業」と目論見書では解説されている。しかしながら、これでは当社のオリジナリティがはっきりしない。当社の強みは「再生プラン」にある。土地や建物を、売買、競売、M&A、等価交換などで取得し、スクラップ&ビルドやバリューアップの手法を用いて、ハード・ソフト両面において再生し、付加価値を向上させるところにある。また、従前の用途とは異なる出口を検討しより効率のよい不動産用途にスクラップ&ビルドしてしまう。そこがマンション専業のデベロッパーや他の建設業者とは異なるところである。つまり、ある土地が商業施設ではダメだが、賃貸オフィスとか高層分譲マンションなら利回りが上がるという複数の可能性を念頭におき比較検討し効率の高いものを選択するのである。
このような手法で事業を伸ばしてきたわけであるが、ここ2年間の売上の事業別内訳を見ると、開発分譲事業の売上に占める割合が6割を越していたが、今期以降においては開発分譲案件の相当額をファンドに組み入れて運用するため、不動産流動化事業の割合が8割を越すことになりそうだ。ちなみに今期の売上予想は142億円を見込んでおり前年比で50%アップとなっており、経常利益も30%アップの11.2億円を見込んでいる。また、不動産流動化事業への投資の母体となる専用ファンドの残高を200億円まで伸ばし、ファンド運用によるフィービジネスも収益の柱にする構想もある。
次に、上場のメリットおよび株主還元について聞いてみた。同社の前期末自己資本比率は10%程度と非常に低く、調達は銀行借入に頼りきっている状況である。今回の上場によって、調達方法に幅がでてくる為、まずは調達金利の低下と他の手法での調達への道が開かれたと言えよう。特に調達金利の低下については、前期末で140億円超の借入残高がある当社にとってプラス要因となることは間違いない。さりとて、このままの自己資本比率では満足しているわけではなく、15%程度までは出来るだけ早く改善したいそうだ。 また、株主還元については、配当は当然考慮するが、それよりも企業が成長するために外部流出するキャッシュを押さえて、投資にまわし、株主の皆様には企業の成長による株主価値の向上でもって報いたい意向だ。
山口社長は、中長期的な目標として、売上高経常利益率10%、一人当り経常利益額3000万円の達成を掲げている。それが実現されれば、不動産業界で3位以内の生産性の高い企業になるはずと言い切る。同社の現在の一人当り経常利益額は2200万円。今後の展開しだいでは数年後に実現不可能な目標値ではない。「企業再生」ならぬ「都市再生」により、都内の不動産を活性化に期待したい。
東誠不動産株式会社ホームページ ⇒ http://www.toseifudosan.co.jp/
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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