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Tokyo IPO
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「本質的にいい会社とは何か?を考える先に高い投資パフォーマンスがある」
   
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ 代表取締役 藤根 靖晃
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中学生からずっとやっていた競馬を証券会社に入ってから間もなくやめた。別に競馬が嫌いに成ったわけでも、特別負けが込んでいたわけでもない。費やした時間を時給に換算すればとてつもなくマイナスにはなるけれど、馬券の収支だけ考えればトントンよりはかなり良いほうだっただろう。それでも競馬は割が合わない。25%も場代を取られていたのでは常に3割以上のパフォーマンスをあげなければトントンには成らない。そういう意味では、株式は競馬に比べれば間違いなく遥かに易しい。
株式も競馬もある意味では同じである。"ある意味"とは、勝つためにすること、である。あなたは馬券を買うときに何を重視しますか? 過去のレースの実績、持ち時計(自己ベストタイム)、調教タイム、上がり3Fのスピード。そう、その通り。でもあなたは配当の低い本命馬券しか取れないだろう。高い配当の中穴を点数の少ない馬券で取ることは偶然で無ければ出来ない。本当に勝つためには、もっと本質的にならなければならない。本質とは、馬の脚質(先行とか追い込みではなくて、体型、歩くとき・走るときのフォーム)、馬のその日の調子、を分かることだ。もちろん、簡単なことではないし、常に見続けてないと役に立つまで行かない。犬好きの飼い主が犬の顔を見ただけで何を欲しているかが分かるのと同じ様なものだ。こんなことはデータを見ていたって分からない。訳知り顔の評論家の言うことを聞いたって役には立たない。自分の目で見て、目に焼き付けて何がポイントなのかを見つけなければ成らない。特に新馬から4歳まで成長期にある馬は大きく変わることがある。これはデータを見ていたのでは殆ど分からない。
株式も基本は同じである。株価チャートも、業績推移も、データでしかない。現在の業績のいい会社を買ってもドキドキするようなパフォーマンスはめったに期待できない。うっかりすると急に下方修正をして大損に見舞われるかもしれない。いい会社とは何かを考え、観察し、それを肌で感じ取れるようにすることが重要なのだ。会計学に詳しくなることや、精緻なDCFモデルが作れること、ましてやMBAを取得していることがパフォーマンスの向上にそれほど役に立たないことは誰よりも機関投資家が証明してくれている。話はそれるが、僕が比較的懇意にしてもらっている経営者の方はIRを積極的にやりたがらない。「俺が株主になってもらいたいのは、経営方針をきちんと聞いてくれて、何が経営にとって重要なのか、経営戦略は会社のリソースと併せてどのように進めるべきかを本当に考え、理解しようと努めてくれるような相手であって、目先の数字にだけしか興味の無い連中に時間を費やすのはもったいない。」 まさにその通り。
それでは、本質的にいい会社とはどんなものだろうか?まず、経営者が自分の会社の実力を理解している会社。組織のフレームがしっかりしている会社。従業員のモチベーションの高い会社。そんなことは当たり前だと思うかもしれないけれど、それをキチンと見分けられるアナリスト、ファンドマネージャーはそれほど多くないようにも思う。
弊社(tiw)では、定性的な情報を定量化するモデルの開発をあるコンサルタント会社と共同で行っている。なんとか今年中には実用化レベルにもっていきたいと考えている。
さて、企業の見極め方について一つの例を挙げよう。「会社は株主のためにある」と本気で主張する社長が居たとする。この会社はいい会社だろうか?僕の答えはNOである。投資家向けのある種のリップサービスなら分かるけれど、株主を見ながら、株価を気にしながら経営を行うことは、うっかりすると上司ばっかり見ている中間管理職と同じになってしまいはしないだろうか。投資家受けする戦略をとり続けたあの有名企業が今、どうなっているだろうか?株主ではなく顧客のために企業はあると主張できる会社のほうが正しいと、僕は思う。顧客があってこそ、会社が利益をあげ、成長して行けるわけであり、それが結果として株主に報いることにつながる。それを基軸においていない会社は、いずれ綻が出る。
最後に1冊の本を紹介したい。「日本の優秀企業研究 企業経営の原点-6つの条件」(新原浩朗著 日本経済新聞社)。既に読まれた方も多くいらっしゃると思うが、優秀企業の特質を6つ抽出して経営学の見地を踏まえて解説している。今までなんとなく、本当はこうじゃないか、と思っていたことに確信を与えてくれる。長期投資の視点を養うには非常にいい本である。幾つか見出しを紹介しておこう。「なぜ経営者の理解の範囲に絞るのか」、「世界市場前提だから「単品」に絞る」、「難しいものこそ自分たちでやる」、「企業内企業の誕生と全体最適の喪失」、「「監視のガバナンス」VS「自発性のガバナンス」」、「運命共同体的意識と企業文化」など。
余談ですけど弊社では現在、経営企画スタッフを募集しております。アントレプレナー精神を持つ方は是非、お問い合わせ下さい(http://www.tiw.jp)。


株式会社ティー・アイ・ダヴリュ 代表取締役 藤根 靖晃


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