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Tokyo IPO
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「投資を考えるシリーズ 〜3.本物の投資家になるために」
株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
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前号においては、投資家と株主の違い、そして、投資家として証券市場で打ち勝つためにはIR(インベスター・リレーションズ)の重要性を認識する必要があると述べた。今号では、もっと具体的に、実際にどのような投資手法をもって株式投資を行うのがベターであるのか解説していきたく思う。
個人投資家にとって、株式投資のスタイルは実にさまざまなものがあると思う。私も、株式投資は長年の経験を持つが、証券会社に勤めていた時代にも実にさまざまな投資家と出会った。ある人は、東証上場1部の銘柄しか買わない人もいたし、その中でもブルーチップといわれる一流ブランドの銘柄しか投資しない人もいた。銘柄を随分細かくたくさん保有する人もいれば、新規公開株のみばかりを申し込む人もいた。信用取引を使って短期で頻繁に売買する人もいた。こうした層はネット時代の今では、デートレーダーとして、個人投資家の象徴的な存在になりつつある。
こうした多くの投資スタイルのうち、それぞれの投資パフォーマンスがいかようになっているのか知る術もないが、わが国日経平均が長期低迷を続けている中では、低パフォーマンスに喘いでいるのがおおかたの現状ではないかと思う。多くの個人投資家が含み損を抱える中で、資産運用の重要性は、頭では分かりつつも、安全性の高い預貯金から未だ、株式市場に本格的に資金が流入してこないのも無理もないといえる。
しかし、実際のところ、こうした投資スタイルは多々あるものの、よくよく追求してみるとそれぞれのスタイルには一長一短があり、どれが正解であるといったものはない。短期売買は、投機であるといった説もあるが、昨今の上昇相場にいては、デートレーダー達は、かなりの高パフォーマンスを上げているという。投資家の最終目標が投資パフォーマンスの指標であるROI(Return
On Investment:投資収益率)の向上であることを考えると、いわゆる長期投資よりもはるかに効率のよい結果が出ているといえよう。また、多くの解説本では、自分流の投資スタイルを身につけることが株式市場とうまくつきあうコツであると言っている。けだし至言である。しかし、どれがよいとはいってくれない。このため多くの個人投資家は、自分流の投資スタイルを確立できず、ますます混迷の度合いを深めていくのである。
実は、投資スタイルの是非は、論じてもあまり意味のない議論である。自分流の投資スタイルを確立するのは確かに大切なことだが、一端確立したからこれでよいというものではない。なぜなら投資対象である証券市場は生き物であるからである。少し抽象的な物言いになってしまったが、要するに環境がどんどん変わるからそれにあわせて投資スタイルも変えなくてはならないということである。むろん、投資する銘柄によってもスタイルを大きく変えなくてはならない。大海でクジラを釣ろうとする際に普通の釣り糸と餌でしとめてやろうと考える漁師は、まずいないだろう。また、天候状況を見誤り、装備を怠れば命を落とす危険もある。株式市場を海とするならば、同じようにそこには常に危険と隣りあわせと考えておかなくてはならない。
すなわち、投資に際しては、現在の証券市場などの外部環境と自己の投資資金の性格などの内部環境をよく把握し、実際に投資する銘柄の内容、性格をよく分析しなくてはならない。こうした現状分析を経て、はじめて実際の行動をとる投資スタイルが確立していく。例えば、現在のIPO(新規公開)市場は、非常に堅調で、新規公開株さえ入手できれば、多くは初値売りすることでかなりの高パフォーマンスを上げることができる。その後、多くの銘柄は、売買が一巡すると大きく値を下げるのが通例である。こうした新規公開株のチャートだけをみていると、公募段階で入手し、初値で売ることが一つの投資スタイルであることが分かる。しかし、銘柄によっては、その後、それ以上のパフォーマンスで大きく値を上げていくものもある。初値で売却した投資家は、その銘柄を保有していながら、みすみす高パフォーマンスの機会を失っていることになる。
こうしたロスを生む要因としては、投資家がそれだけ調査と分析を怠っていることにほかならない。これだけは断言できるが、証券市場で勝つためには勘の要素を省くことが肝要である。投資はギャンブルではない。これは、このシリーズを書き始めた最初に強調したことだが、株式投資を勘でやっているうちは、素人の域を出ていないことを認識しておきたい。
株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎(証券アナリスト・IRコンサルタント)
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