先週から日経新聞の一面で「働くということ」という記事が連載されている。大卒の就職率が55%まで落ち込み、定職に就かない若者が多くなる一方で、大企業をリストラされて就職浪人中の高齢者もかなりの数を数える。殆どの定職を持たない人々は、自らの夢や誇りを持っていない、もしくは失ってしまっているのではないだろうか。そんな人が多い中で、自らの明確な目標を持ち、世の中の多くの既存の価値観に逆らい、我が道を進む人たちも多数存在するのも事実である。今日は、ここ数年間のIPO企業を分析した結果、社員数の少ないベンチャー企業を勇気付けるデータが存在するのでご紹介しておきたい。
1999年以降毎年のIPO企業から社員50名以下のIPO企業の株価パフォーマンスを計測した。計測方法は公募株価と2004年3月上旬の株価の比較である。
上場年度 社数 (全IPO企業数) パフォーマンス
1999年 4社 (98社) 55%
2000年 33社 (203社) 78%
2001年 37社 (169社) 299%
2002年 31社 (124社) 316%
2003年 25社 (121社) 333%
逆に、社員数が多い企業上位10社の株価パフォーマンスを同様に計測してみた。
上場年度 50名以下 上位10社
1999年 55% 202%
2000年 78% 104%
2001年 299% 102%
2002年 316% 136%
2003年 333% 246%
このデータを読むと、2000年の東証マザーズ、ナスダックジャパンの登場で新興市場にIPOする企業数が急増している。1999年までは上場できなかった企業が多く新興市場に登場してきた。2000年は、ITバブルの影響を受けて50名以下のITベンチャー企業の公募価格が高く設定された影響もあり、社員数が多い東証1部・2部企業の株価パフォーマンスに劣っている。
しかしながら2001年以降は完全に社員数の少ないベンチャー企業が大手を凌いでいる。固有名詞でご紹介すると、2001年組では、ストロベリーコーポレーションが19名で株価は9.9倍、インターアクションが22名で株価は12.2倍。2002年組では、アドバンスクリエイトが19名で株価が8.2倍、フォーサイド・ドット・コムが30名で株価が26.8倍となっている。
筆者も仕事柄多くの新規上場企業の社長にお会いする。どのオーナー社長も、事の始めは少人数での事業立ち上げだったに違いない。もっと極論すれば、一人で事業を始めた方もかなり多そうだ。その後、IPOまでこぎつけるのには相当のご苦労があったと考えられるが、小が大を負かす世界が株式市場では往々にして起こり得る。
自分が好きでやっていたことがビジネスになった人。大企業でのビジネスに飽きてしまって、自らの価値観に基づいて事業を起した人。その動機は人それぞれ異なるかもしれないが、誰でも自分のやり方にこだわる「プロ意識」を持って仕事をすれば、将来起業をしてIPOする道も開けるのではないだろうか。他人と違う自分の生き方にこだわりを持ちつづけることがIPO企業への近道かもしれない。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
編集長コラムバックナンバー ⇒ http://www.tokyoipo.co.jp/nishi2004.htm
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