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自分の価値観で仕事をする時代の到来  〜パソナテック森本社長に聞く〜
   東京IPO編集長 西堀 敬

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3月末から4月は人事の季節である。人事異動や昇格・昇進などで、サラリーマンはこの時期は悲喜こもごもで、人生を見つめ直したくなっている人も多いのではないだろうか。大企業には組織を強化する目的で人材を社内に留めておくためにローテーション人事を行う習慣がいまだに残っている。ところが、最近の若手サラリーマンは自らの意志で仕事や職種を選択したい願望が非常に強まってきている。会社に所属していたのでは、自らの目指すキャリアアップが出来ないという危惧をもつIT関連技術者に対してソリューションを提供する会社がこのたび上場した。それが、筆者が今回インタビューしたパソナテックである。

同社は10年前に旧株式会社パソナの一事業部として産声を上げた。その後、パソナが出資していた株式会社ペンタゴンに営業譲渡が行われ6年前に社名を変更したのが現在のパソナテックである。インタビューに応じていただいた森本社長は、パソナのWindowsレスキュー事業部設立から本事業に携わっており、オーナーではないが事業の創業者として今日の上場までこぎつけた中核人物である。

パソナテックは、ITエンジニアにかかわる人材派遣・請負事業および人材紹介を事業として展開する。派遣と請負が売上の99%を占めており、職種としては、@デベロッパー:Aネットワークエンジニア:Bサポートエンジニア:Cクリエーター:Dその他:に分かれている。職種の詳細は同社のHP ( http://www.pasonatech.co.jp/corporation/services_job.htm )を参照願いたい。売上の構成として、前期においては@ABが総売上に占める割合としてそれぞれ28%で拮抗しているが、ここ数年のトレンドとして粗利率の高い@のデベロッパーの比率が急進してきている一方で粗利率の低いサポートエンジニアの比率が低下してきている。それは、売上と粗利率の組み合わせで売上総利益率を上げるためのサービスミックスの結果である。

同社の前期売上は67億円、今3月期の売上予想は76億円と二桁成長をここ数年間続けている。しかしながら、事業立ち上げ期にはパソナの名前の為に、相当苦労したそうだ。
パソナは、事務の女性を派遣するというイメージが強く、IT関連の人材と言っても、そんな人材がいるのか?パソナの人材に何ができる?といった先入観が非常に強く苦労の連続であったようだ。そのことが営業戦略にも表れており、今日まではパソナの全国網を使うというより、自らターゲットした顧客を一本釣りで落としていくスタイルで自己完結型を通してきた。ここに来てやっとパソナの営業ネットワークを利用した営業展開を行い、全国エリアで裾野を広げていく計画である。

さて、同社の事業が成り立つには人材の提供サイドと人材の受け入れサイドの両方にそれぞれのニーズが存在する必要がある。冒頭にも書いたとおり、雇用形態のパラダイムシフトが起こりつつあることに注目すべきである。日本的経営の強みといわれた、終身雇用、年功序列型人事を好まない若者達が増えてきたということだ。特にITの分野においては
自らの技術が常に最先端であることに対する意識が強く、日本企業が得意とするローテーション人事制度を持つ企業への執着がまったくない人たちが増えてきている。つまり、自分のキャリアアップは会社が決めるのではなく、自らのリスクでもって決断していくスタイルが増えてきたということだ。そのような考え方を持つ人が増えてきても片思いに終わるのではないかと筆者は考えがちだが、大手の企業にもIT分野における派遣社員受け入れのニーズが高まってきている。IT技術の高度化に伴い、ローテーション人事の中ではスペシャリストが育ちにくく、先端技術にキャッチアップした人材を常に確保しておくのが難しくなってきている。また、事務分野で派遣社員にやってもらっていた作業と同様にシステム関連業務もルーティン化されるものも出てきており社員と分業していく必要性がある。
高度な技術保有者と日々のルーティン業務という両方においてそのニーズは高まってきており、この流れは日増しに加速していることは間違いない事実である。

特に当社がIT技術者の派遣において、企業ニーズを満たすための優位性を保有している点は、資格取得者エンジニア数の多さである。デベロッパーと呼ぶ職種の単価の高い上流工程の仕事ができる人材を派遣においては、当社と競合する会社はほとんどないという。2万人を超す登録者のうち、延べ人数で7000人以上がマイクロソフト、シスコ、オラクル等の資格を取得しており、まさに最先端IT技術集団を構成できる人材を抱え込んでいるともいえる。また、企業が求める質の高い人材のところから派遣を始めたことが今日の評判の高さを支えているともいえる。

IT関連の人材派遣市場は現在1,000億円規模と推定されており、近い将来5〜6倍くらいにまで成長が見込まれ、1兆円になる可能性も否定できないと森本社長は言う。まさに日本人の仕事に対する価値観の変化がこの市場の成長のスピードを加減するのである。当社は事業成長の目標を年間売上30%アップとしているが、日本人の価値観が変化するスピードはそれ以上に早くなる可能性も十分ありえる。当社にとってのフォローの風はそう簡単にはやみそうもないが、当社の経営スピードが風の吹くスピードよりも早ければ大きな市場を獲得する日も近いのではないだろうか。

当社のIPOは資金調達が目的ではなく、パソナという冠がイメージさせる職種分野からの脱却を図るのがIPOの大目標であった。つまり、当社独自のブランド力の構築と顧客信用の確保にあったのである。森本社長は、IPOでやっとスタートラインについたところ、人材ビジネスにおいてこの分野ほど成長が望める事業は他に思いつかない、と言う。その自信が今後の成長にドライブをかける事に期待したい。

パソナテックのホームページ ⇒ http://www.pasonatech.co.jp/




東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

 


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