先週の金曜日の日経新聞に2005年度の新卒採用計画の集計が掲載されていた。報道によると、大卒の採用予定はこの4月入社に比べて2割増と大幅に改善するらしい。採用数が大幅に伸びた業種を見ると、不良債権処理でリストラを行ってきたメガバンクを中心とした銀行業界、デフレの影響で先行投資を控えてきたスーパーなどの小売業、高齢化の流れの中で介護関連事業者などとなっている。一方目を引くのが、新興のサービス業の採用増である。絶対数は多くないもののインターネット関連や情報産業のベンチャー系企業も大幅増の採用計画を立てている。
経済指標の統計にもある設備投資の計画は大企業から中小企業にまで裾野が広がりつつあると言う。投資と言うと設備という意識があるが、人材採用も投資である。通常の設備は減価償却により年々負担が少なくなり、耐用年数が過ぎれば負担がゼロになる。しかしながら、人材への投資は設備投資と違って年々負担が大きくなってくるのが日本の雇用システムである。中小企業の域を出ない上場ベンチャー企業は、通常即戦力となる中途採用を中心に行うのであるが、新卒を採用し始めるとなるとかなりの負担が生じてくるのではないだろうか。
ここ1年間にIPOした企業も日経新聞の新卒採用計画の中に記載のある企業もある。上場企業として余裕が出てきた現われなのか、それとも上場を機に弾みをつけたいのか、その辺をよく吟味する必要がある。新卒の人件費は中途採用に比べて低いのは当然であるが、パフォーマンスが出るには時間がかかるし、一人前に育てるにも時間がかかる。そしてパフォーマンスがでる人材になる保証はどこにもないのである。
すでに3月決算企業の2004年3月期の決算発表が始まったが、今週から大手エレクトロニクスメーカーの発表が相次ぐ。各社とも今期も増収増益の業績予想が期待されており株式市場がどこまで織り込みに行くのかが興味の的である。先週からの円安トレンドによる内需関連からハイテクへのスイッチングが続く市場の流れが連休を挟んでどのように動くのか注目される今週である。中小型株式への投資も一服したような動きも一部には感じ取れるが、新卒人材への投資を積極的に行うPOST IPO企業に再度注目してみてはどうだろうか。リスクを負って新卒採用を行う新興上場企業の業績が吉と出るか凶と出るか。いずれにしても言えることは、業績の大きな変化を見込める企業でないとこのような人材への投資は行わないということである。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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