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パチンコ業界のモバイルコンテンツキラー登場 〜コムシード福島社長に聞く〜
東京IPO編集長 西堀 敬

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コムシード(3739・名証セントレックス)
代表取締役社長 福島 雄二氏

街角や地下鉄の中などで携帯電話の着信メロディーが流れているのを耳にすることがある。おおかたの曲はどこかで聞いたことのある流行歌の頭の部分だったりするが、ときどき耳馴れないメロディーが流れることがある。オリジナル曲かと思いきや、実は日本に2100万人いるというパチンコ・パチスロ利用者の方なら週末に耳に馴染んだ曲ではないだろうか。そんなパチンコ・パチスロ愛好者が常に聞きたくなるようなメロディーを携帯電話で提供しているのが、5月20日に上場したコムシードだ。上場初値は200万円と公募価格50万円の4倍を付けた。その直後に福島社長にお話をお伺いした。

コムシードの福島社長が、このビジネスに身を投じるきっかけとなったのは、兄の誘いで日本テレネットというゲームソフトウェア会社を立ち上げに関与したところから始まる。最初は兄と自分の二人での船出だったと当時を振り返る。日本テレネット時代は、ソフトの開発、営業と管理業務以外のすべてをやったそうだ。その後ゲームソフトのグローバル化が進んだのを契機に、マイクロワールドという会社を日本テレネットの子会社として設立し、ゲームソフトの輸出入を始めたが、結果としてあまりうまくいかなかった。続いて、パチンコメーカーに液晶のモジュールを提供するビジネスを始め、パチンコメーカーとの付き合いができるようになった。その延長線上でパチンコ店の台の稼動状況がわかる端末装置を作るようになり、パチンコ店との付き合いも広がってきたのが今日の事業の始まりとなっている。

当社は、パチンコ・パチスロ遊技機のメロディ、キャラクターをiモード上の公式サイト「パチンコ倶楽部」で配信するサービスを2000年9月に開始した。最初は日本テレネットの名前でドコモに持ち込もうとしたが、時間が過ぎるばかりで遅々として進まなかった。そこで、NEC経由でドコモに持ち込み、公式サイトの選定にかかる時間をかなりショートカットした。パチンコをやらない筆者にしてみれば、パチンコ・パチスロ機が発するメロディーを聞きたい人がいることが理解しがたい。しかしながら、福島社長によると、週末の全国のパチンコ店にある約600万台はほぼ満席状態となり、パチンコマニアの習性として、一度店に入ると数時間は滞在するらしい。同じ数字や絵柄が三つ並んだりする時に流れるメロディーは非常に爽快感があり、何時の間にか耳に馴染んで、いつもそのメロディーを聞きたくなるということらしい。そんなメロディーマニアが当社が提供する携帯電話サイトの会員となって2004年3月末現在で37万人に達している。 日本のパチンコ愛好者が2100万人いること、携帯電話の普及台数が7500万台を越していることを考えれば、年間30%の会員増はしばらく続く可能性も十分ある。

読者の皆さんは、携帯コンテンツ提供会社のビジネスモデルはすでにご存知かもしれないがもう一度おさらいしておこう。仮に会員が月額300円の利用料を支払ったとすると、携帯電話会社に30円(10%)、ASP業者に90円(30%)をとられてしまう。残りの180円(60%)が携帯コンテンツ運営会社に入るが、コンテンツが自社で作成したものでない場合は、コンテンツホルダーにロイヤルティーを支払うことになる。コムシードの場合は、パチンコ・パチスロメーカーに対してロイヤルティーを支払うことになるが、この場合のメロディはJASRACの対象外となっているので一般の音楽に比べるとその料率は低いそうだ。従って、このビジネスモデルは扱うコンテンツの種類に関係なくスケールメリットを出したサイトが勝ち組となる。コムシードは現在27社のメーカーの協力を得てコンテンツを提供しており、コンテンツのカバー率は85〜90%となっている。福島社長は、コンテンツの独占はしないが品揃えは必要で、楽天や価格コムのように情報量や品揃えが他を圧倒することが成功の条件と語る。

一見すると、当社はパチンコ・パチスロメーカーへの依存度が高くて、彼らが同じビジネスを始めたらひとたまりもないくらいのニッチビジネスに見える。しかしながら、パチンコ・パチスロメーカーはヒット遊技機を出すと言う本業に専念しており、独自の公式サイトを保有していても基幹業務のサポート的な位置付けになっており、当社へのコンテンツ提供を阻害する要因にはなりえないと言える。むしろ、メーカーにとっては自社の遊技機のメロディーがダウンロードされてあちこちで鳴ることが大きな宣伝効果を生むともいえる。

最後に今回のIPOの意義を福島社長にお伺いした。最大の狙いは、コムシードという会社のブランドを浸透させることが目的だったそうだ。パチンコ・パチスロ業界において、当社の認知度はまだまだ低く、携帯コンテンツにおいてパチンコ・パチスロ業界のデファクト・スタンド−ドになるためのインパクトを狙うためのIPOであった。とは言え、公開企業として株主の皆さんへの還元は絶対必要であり、配当においてもできるだけ高いレベルを検討したいそうだ。また、いままでコツコツと事業を積み上げてきたが、現状の社内の経営資源では事業拡大のスピードに限界があることも承知している。そこでビジネスの拡大をドライブするためにはM&Aなどの手法も使っていく必要を感じており、流れてくるチャンスを逃さないためにも株式市場をうまく使って行きたいとのこと。

コムシードは年商10億円にも満たない発展途上の会社であるが、モバイルインターネットのリーダー企業を目指す、という経営目標を掲げている。株価においてはロケット発射したコムシードであるが、この勢いを事業拡大にどのように生かせるかが今後の課題でもある。
しかしながらモバイルコンテンツの世界はまだ始まったばかりであり、優勝劣敗を決め付けるにはまだ時期早尚であり戦国時代の覇者になれるチャンスはまだ残っているのではないだろうか。

コムシード会社HP → http://www.commseed.co.jp/


東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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