先週、今週は3月決算企業の株主総会が開催されている。特に明日の6月29日はピークを迎えるそうだ。コーポレートガバナンスなるものが日本にも導入され、報酬委員会なが設立され、役員報酬などは身内で決められない時代がやってきたのだ。先週終わった株主総会では役員報酬の総額を開示した企業も出てきている。この議論は、個別の役員の報酬開示にまでエスカレートする日が近いのではないだろうか。米国ではCEOの報酬を開示する企業が多く、その内訳はキャッシュとストックオプションに分かれているケースがほとんどだ。総額で何十億円なる報酬を得ているCEOも少なからず存在している。
日本はどうだろうか。1億総中流と言われた時代はすでに過ぎ去って久しいのではないだろうか。厚生労働省が発表した資料によると、所得の高い方から四分の一(25%)の世帯が全体の所得の四分の三(75%)を占めるようになってきている。厚生労働省は、この所得格差の理由を、高齢化の影響、単身世帯の増加などを挙げているが、企業で成果報酬主義が浸透してきた表れでもあろう。2割:8割の法則が所得の構成にも現れてきているといえるのではないだろうか。
企業の現場では成果報酬主義が導入され、すでに同年代の社員間では年俸格差が出てきている。ところが経営者の報酬レベルを見ると、V字回復を実現したからと言って役員報酬総額が数倍になった会社はないのではないだろうか。たとえ報酬委員会が出来たとしても、生え抜きのプロパー社員が経営のトップに立った場合、同期入社や場合によっては先輩社員などの目があって高額な報酬を得ることは難しいのではないだろうか。新卒で入社した人間がそのまま経営のトップに就くのが恒常化している日本企業にはいかなる制度を採ろうと高額報酬を得る術はないのかもしれないと諦めている経営者も多いのではないだろうか。
企業が経営の危機に直面するまでプロの経営者がほとんど採用されない日本的経営の風土には似つかわしくないかもしれないが、筆者からの提案がある。社長就任時と退任時の時価総額を比較して、退任時の時価総額が就任時を大幅に上回れば株主立場からすれば、少なくとも退職金もOKとなるだろう。それではさらに、年間の報酬に関して時価総額と当期利益の増減を報酬決定のメカニズムに取り入れていくというのはどうだろうか。この二つの要素だけで決めろと言っているのではなく、必ずこの二つを入れるべきということである。 もちろん、ストックオプションなどは、株価の影響を大きく受けるので、過去に取得したストックオプションの現在価値なども報酬の一部として開示すべきであろう。
上場すれば自社株という金融資産が自動的に貨幣的価値を持つオーナー経営者は報酬なるものを議論する必要はないのかもしれないが、持ち株比率が低いIPO企業の経営者にとっての報酬制度は重要な意味を持つ。特に個人投資家の成長期待は大きいIPO企業の場合は、オーナー企業であろうがなかろうが、筆者の意見を参考しにした報酬体系を検討いただきたい。 投資家(株主)のメリットと経営者のメリットが必ず一致する経営になることがプロの経営者を養成する近道ではないだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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