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アナリストを巡る2つの動き
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ  代表取締役 藤根 靖晃
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最近の証券市場を取り巻くニュースから特に証券アナリストに関連したものを2つ取り上げてみたい。
まず最初に、東京三菱銀行とUFJ銀行の統合発表である。当然ながら銀行本体の合併だけではなく、系列証券の統合も視野に入ってくる。証券仲介業による銀行の参入によって事実上、銀行と証券の垣根が完全に無くなると言えるだけに超メガバンクの誕生は、証券業界にも大きな影響を与えることが予見される。証券会社は、銀行と比較して考えた場合、まだ集約化の余地が多分に残されているだけに、今回の東京三菱・UFJの統合が証券業界の新たな統合に発展する可能性を秘めていると言える。

アナリストに関することを言えば、証券会社の社数が合併によって減少することはアナリストの人数もまた確実に減少する、という問題である。97年頃〜2002年にかけて証券会社の破綻、合併、リストラ等によって多くのアナリストがその職を失っている。株式市場の回復によって多くの証券会社が企業アナリストの採用を増やしているが、多くの証券会社にとってアナリストのコストが原則的には株式委託売買手数料によって賄われているという貧弱な構造にある以上、一時的なものでしかない。そもそもアナリストには会計士や弁護士と同様に高い職業倫理が求められているのも関わらず、その生活基盤を会社員として特定の証券会社に依存しなければならないという状態こそが矛盾をしていると考えるべきではないだろうか。アナリストが委託手数料からの間接的な収入ではなく、独自に収入を得られるような社会基盤を構築することが長期的には求められるであろう。
トップ・アナリストと呼ばれる(呼ばれた)人たちは、次の世代のための環境がどうあるべきなのかを考えて欲しい。それは高いポジションに居る人間に課せられた社会責任であろう。機関投資家の方々もアナリストへの人気投票においてはそうした視座も持っていて欲しい。それはある種の社会責任投資(投票)とも言えるのではないだろうか?

次に注目されるのが、7月末から米国において独立系アナリストレポートの採用の義務化が施行されることである。 簡単に説明すると、アナリストの中立性問題に関する米規制当局と証券会社(大手10社)の包括的和解(2002年12月)がなされた際に、3社以上の独立系のアナリストと契約を結び顧客に自社のアナリストレポート以外のものを提供しなければならないということが和解条件に入れられていた。新聞報道によれば、独立系のアナリストレポートが採用されることによって証券会社のアナリストレポートに強い抑止力がかかっているようだ。顧客が独立系のレポートと見比べることから"発行会社に配慮した"レポートを出し難くなるということである。その結果、"売り推奨"の銘柄が増えている模様である。日本ではこうした制度が創られる予定は全く無いが、必ず必要なものとなるだろう。前述の証券会社の集約化とも関連するが、証券会社の集約化(減少)は特定企業をカバーするアナリストの減少を顕著にする。ある特定アナリストの言動が株価に与える影響を大きくすることは市場にとって好ましくないことは明らかであろう。

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
代表取締役  藤根 靖晃
(先日、NIFTYの写真を見た人から"証券界のヨン様"と言われましたが滅相もありません)

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