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社会的責任投資(SRI=Socially Responsible Investment) は個人投資家にも有効か
東京IPO編集長 西堀 敬

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最近、社会的責任投資(以下SRI=Socially Responsible Investment)なる言葉が、株式投資の世界でも使われるようになった。一方で、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)についての議論も高まってきた。

筆者は常日頃から、新規上場企業の経営トップにお会いする機会が多く、企業のミッション、ビジョン、パッション(Mission, Vision , Passion)について聞くことにしている。ミッションとは、企業が世の中に存在する意義。ビジョンとは、企業が将来なりたい姿。パッションは、ビジョンを実現するための社員への啓蒙と経営者の志。であると自ら勝手に定義をしている。

他方で、企業が存在していくためには、価値創造が必要である。筆者は価値創造には自分価値、顧客価値、株主価値の三つが存在すると考えている。自分価値とは、経営者も含めた社員が自らの価値を高める必要がある。今日の自分よりも明日の自分のほうが成長していると考えられる企業であることが重要である。次に顧客価値だが、企業は自らが創造する商品・サービスを誰かに買ってもらって収入を得なければいけない。顧客がその商品・サービスに対して価値
を見出さない限りはお金を払ってもらえないわけで、つまりは顧客価値創造が必要であるということだ。最後に株主価値であるが、これはコラムを読まれるかたなら説明を受ける必要もないと思うが、株主ひいては投資家の利益を創造することにある。

明確なミッション、ビジョン、パッションがあって、三つの価値創造ができている企業は当然の事ながら株価は市場平均をアウトパフォームしているに違いない。しかしながら、CSRとかSRIにはフィットしない企業も多く存在する。それは、世の中には必要悪というものがあって、世の中の万人には必要ないが、存在することを否定できないものが沢山ある。たとえば、競馬や競艇のギャンブルがひとつのいい例である。法的には賭博は禁止されているが、公的に逃げ道を作っているわけである。

上場企業は上場審査と呼ばれるプロセスの中において、企業の経営者の道徳観、倫理観は当然のことで、それにもまして事業の社会性も審査の対象となっている。しかしながら、一旦上場してしまえば、その後はある程度自由度がある仕組みが現存していると言っても過言ではないだろうか。読者の皆さんにもご理解いただける身近な例としては、新規上場企業の目論見書には、将来のことはほとんど記載されていない。将来のことで書かれている部分はリスク情報の部分くらいだ。つまり、将来のことはどうなるかわからないから、目論見書に書いてはいけない、ということらしい。しかし、上場日以降は、企業の将来について何を言ってもOKになっている。経営者によっては大言壮語で、できるか出来ないか判断がつかないような話をするような人まで居る始末だ。

CSRの観点からすれば、上場審査はどうなっているんだ、と言われそうだ。しかしながら、株式市場のそもそもの存在価値と意義を考えれば、リスクマネーを成長企業に供給するという側面があるはずだ。そのリスクマネーの供給者が居なければ、新興市場に上場する企業への資金供給は不可能になる。株式市場を支える投資家の思考にはあくまでもリターンが一番のキーワードになっているはずである。SRIは超過リターンの源泉になるはずだという議論もあるが、いざ、個人投資家が直接株式に投資するときの価値観となるとそういうわけにはいかないはずである。公共性が高い運用の世界、たとえば年金運用などにおいてはSRIも重要であろうが、個人の限りある時間の中での運用を考えた場合は、筆者の企業を評価するポイントだけで選別したほうがリターンは高いと考えられる。

いずれの投資においても、一致している点があって、それは企業を評価するには、財務分析や客観基準だけではなく、定性的な側面を含めての判断が重要となるということだ。定性的な側面は、投資家の種類と価値観によって評価が分かれるが、絶対的なリターンに優先順位を置けば評価の基準は一致するのではないだろうか。

ここまで書いてきて、読者の皆様にご注意いただきたいことをもう一度整理してみる。SRIの議論が高まってきて、他人様のお金を運用している機関投資家の人達が絶対的なリターンだけを求めてはいけないというジレンマに陥らなければいいが、と思ったことに加えて、筆者の個人的な考えでは、絶対的なリターンを望む個人投資家の皆さんはこのような議論にあまり振り回されないほうが宜しいのではないだろうか。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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