読者の皆さんも今週あたりから夏休みに入られる方も多いだろう。先週の金曜日に訪問した今年のIPO企業は、親会社の年休のスケジュールに合わせて今週1週間はお休みとのことだった。そんな夏休みをよそ目に暑さにも負けずにひたすら走り続けているベンチャー企業の経営者が多いのも事実である。
さて、東京株式市場は米国株式市場の動きに押されるように連れ安の連続である。「休むも相場」という格言もあるが、個人投資家で信用取引をやっている人々は、ゆっくりと休んでいられない日々が続いているのではなかろうか。オンライン証券会社が台頭する前は、営業マンが信用の維持率割などをある程度予測して余裕をもった株式注文受けていたが、インターネット取引となると勝手が変わってギリギリまで相場を張っている投資家が多いのではないだろうか。自由自在に相場を張れるということは、それだけ個人投資家がリスクをとっている証拠でもある。
信用取引の買い残高は7月中旬に3兆円を越したが7月末には2兆9千億円台まで減少している。一方の信用の評価損率は7月30日現在で12.65%となっており、先週の相場展開からすれば昨年の12月の水準まで悪化している可能性は十分ありうる。しかしながら、個人投資家の悲鳴のようなものは聞こえて来ないのはなぜだろうか。筆者の知人の個人投資家の声を集約すると、今年はすでに2回も利食い終えており、1月以降の相場展開だけでもまだまだ利益のほうが大
きい人がほとんどのようだ。 6月までは楽しかったけど、最近は毎日面白くない、程度のことで済んでいるようだ。ましてや昨年分まで考慮すると、「株は死んだか」なんていっている人は皆無に近いのではなかろうか。
日本の株式市場参加者は、毎朝集計されている外資系証券会社の寄り前注文の売り買いの株数に一喜一憂している。なぜならば、昨年4月に始まった今回の相場のメインプレヤーが外国人投資家であったことは間違いない事実であるからだ。ここのところ、外国人投資家の売りで相場が軟調に推移していることに加えて、信用取引の買残高が非常に高水準にあることから今後の相場展開については弱気の声が台頭してきている。しかしながら、ひとつ見落としてはいけな
いのは、個人投資家の裾野の広がりである。株式投資を行うのはごく限られた一握りの人種であったのは一昔前の話で、最近は非常に若い方々も市場に参加されている。東京IPOのメルマガ会員のアンケート結果からも、30歳台から60歳台までの比率がまったく同じように分布している。この理由を筆者なりに分析してみた。数年前までは株式投資をするのに相当な金額が必要であった。ネットバブルと呼ばれた時代のIPO銘柄を思い出してみると、皆様もご存知の楽天の公募価格は3300万円であった。今年のIPO銘柄で1単元の公募価格が100万円以上の銘柄は数社にとどまっている。ネット証券の台頭に加えて、個人投資家が参加しやすい1単元の株価水準にあることが、一気に個人投資家の裾野を広げたと言っても過言ではない。 売買単価が小さくなったことが、個人投資家のリスクを自然と減少させているのではないだろうか。
信用買残高3兆円を支えている個人投資家の母集団の分析を証券界は是非とも行っていただきたいものである。きっとネットバブル以前とは違った属性が見られるはずに違いない。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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