┏ ――――――――――――――――――――――――――――― ┓
新規公開株式情報の東京IPO
http://www.tokyoipo.com/
┗ ――――――――――――――――――――――――――――― ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集長のジャスト・フィーリング
証券・金融ビジネスは外国人のお家芸
東京IPO編集長 西堀 敬

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

やっと今朝方オリンピックの全競技が終了した。読者の皆さんは、寝不足の毎 日から開放されて名実ともに夏休み明けとなるのではないだろうか。日本の選 手団は大活躍で、ロスアンゼルスオリンピックに次ぐ37個のメダル数になっ た。日本がお家芸の柔道で金メダルが多くとれたことに大変感動された読者も 多いのではないだろうか。今日のコラムは、この「お家芸」にフォーカスして みたい。

オリンピック競技でメダルを取ると言っても、デジタル的な数字で優勝劣敗が はっきりする競技とそうでない競技に分かれる。陸上、競泳、自転車などは、 優劣が完全にデジタル表示される。得点はデジタル数字で表示されるが、加え てレフリーなどの人の判断により勝敗が左右されるサッカー、バレーボール、 テニス、野球などもある。一方で優劣を人間の判断のみに任せている競技があ る。たとえば、体操、シンクロナイズドスイミング、飛び込み、等がそうであ る。これらの競技の採点者はある一定の決められた評価基準を土台にしている はずであるが、点数が採点者間で大きく乖離するケースがある。今回のオリン ピックの体操で点数がいったん出揃ったのちに、場内のブーイングで点数が変 更になったことがあったと記憶している。なぜこのようなことが起こるのか理 解に苦しむ。点数を変更した採点者は、自らの評価に自信がないのかもしれな い。

でも、よく考えてみると、各競技ともに発祥の地(国)があって、その競技の ルールはその地の人が決めたと言っても過言ではないはずだ。シンクロなどの 芸術点(アーティスティックインプレッション)なんていう評価は、採点者の 俗人的な価値観によるところが多く、日本人のセンスとは異なって当然である 。そのような競技で高得点を得ようと思えば、競技発祥の地の文化や価値観ま でも研究する必要がでてくる。

メダルを多く獲得した柔道は、日本のお家芸で、そのルールは日本発のもので ある。「1本」「技あり」などの日本語を使う審判は本当にその言葉の意味を理 解しているのだろうかと首を傾げたくなるときもある。その意味では、お家芸 の競技で勝つというのは、その種目のルールを作った人または国に有利である のは間違いない。

グローバルな証券・金融市場において、そのルールを作り上げたのは米国を中 心とするアングロサクソンの世界である。日本の証券市場もグローバル化し、 外国人投資家動向に関するメディアの報道に国内の投資家は一喜一憂し、相場 が悪くなってくると新たな買い手として外国人に期待しているのである。裏を 返すと、日本の株式市場の動向は外国人投資家に完全に握られていると言って もいいかもしれない。そして、常に株式市場の勝者は外国人投資家であるがご ときことを言われているが、それはしかるべき帰結で、証券金融市場でのゲー ムはルールを作ったアングロサクソンのお家芸なのである。

自らがゲームのルールを作り、日本人がそのルールに慣れてくると、また別の ルールの適応を迫る。1990年代の後半に日本も金融ビッグバンを行い金融の自由 化に踏み切ったが、顧みるとその後の商法・会社法の変更のほうがよりドラス ティックなゲームのルール変更かもしれない。来年の4月から海外の株式市場に 上場する企業が自らの株式を利用して日本企業のM&Aを仕掛けることが可能 となる。M&Aの手法に関しても、欧米のほうがずっと進化しており、日本企 業が海外の企業を買収したケースで成功事例はあまり耳にしない。欧米の投資 家は、自らが戦いやすい土壌を整備したうえで日本に攻め込んで来ているよう に思えて仕方がない。

日本人が世界の証券・金融市場で勝者になれないのは、知恵が足りなかったり 、金融技術が遅れているのではなく、市場のルールを自ら作れないことにある のではないだろうか。だから日本人はなんとか自らがルールを理解できる日本 市場でのプレイヤーにとどまっているように思える。グローバルな市場で先行 してリスクを取るヘッジファンドのマネジャーに日本人の名前が出てこないこ とがその証拠かもしれない。日本の大手機関投資家が海外のプライベートエク イティファンドに出資しているとの報道を聞くと、証券・金融のビジネスが日 本のお家芸になる日は来ないのではないだろうか、という疑問を抱かざるを得 ない。個人投資家の皆さんは、外国人がお家芸とする金融市場のルールで戦っ ていることを忘れるべきではない。つまり、日本の株式市場と言えども、外国 人の都合で動いており、彼らの年間スケジュールを良く理解して投資すること を心がけないと勝機はないかもしれない。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

(c) 1999-2004 Tokyo IPO. All rights Reserved.