大手VCの4〜6月投資額が6割も増加したのだという。企業再生ファンドも
新設も盛んだと報道されている。景気実態は別として、事業を構築するための 資金供給者は潤沢に存在している。資金を提供しさえすれば、儲かる事業を作
り上げることが可能な時期にきていると判断している人も多いらしい。こうし た一般状況は、投資というものに対して一種の「気分」を醸成している。
先月、IPOに対する熱い「気分」は強いと述べた。9月もこの「気分」は収 まらないかも知れない。投資意欲の強さはIPO分野で、格別のものが感じら
れるからだ。
「気分」は短期的な変化の大きさで左右される。絶対水準が低くても、短期的
な変化幅がそれよりも大きくなれば「気分」は一つの方向へ投資資金を投下吸収 させる。
1年前の8月最後のIPOはパレモだった。この時点で、5社平均の初値倍率
は1.23倍、長期債利回りは1.47だった。当時は、7月末からの1ヵ月で長期債利 回りが0.51%も上昇し、景気回復速度が速まっていると判断される状況があっ
た。何しろ、長期債利回りは6月最初が0.5%近辺だったので3ヵ月の間に3倍近 くも跳ね上がった格好だったのだから。
長期債利回りの変化率という事で言えば、今年の変化も大きい。6月下旬には
1.9%を窺うほどの高騰を見せていたのに、直近では1.5%台。いかにも、短期的 な景気停滞を示す展開になっている。こうした大局観が、過去2ヵ月、IPO
人気を下火にさせるかも知れない疑念を生んでいた。しかし、この疑念の期間 は調整期間を提供してくれていただけなのかも知れない。
これまで、長期金利の上昇局面では初値倍率が遅れて上昇し、下落局面では同
時的に低下することが多かった。その長期金利が揉み合い局面に入ってきたこ とで、初値倍率が再騰できる条件が整った。1ヵ月間で、初値倍率が半分にな
ったのだから、下向きの変化幅が大きく、他の指標が調整期に入ったことが反 転期待を抱かせるからだ。
9月の公開は16社で昨年と同じで、選択の幅は変わらない。異なるのは、景気
後退局面と言いつつも絶対水準が上にある投資態度への余裕だ。強気感が生じ 易い状況だ。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)
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