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編集長のジャスト・フィーリング
顧客価値創造を忘れた企業の存在意義とは?
東京IPO編集長 西堀 敬

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大手スーパーのダイエーの再建が大詰めを迎えている。連日のメディア報道で金融・証券関係者でなくとも「いったいどうなるの?」と、興味津々である。産業再生機構の活用で不良債権の処理を急ぐメガバンク3行と自主再建 の道を模索するダイエーの経営陣の溝は日に日に深まるばかりで折り合いが 付きそうにない状況である。

先日あるテレビの討論番組の中で、ダイエーに対する銀行の資金援助額があ れば新たな小売業の立ち上げができるのではないか、とコメントしていた経 済評論家がいた。確かに数千億円にも及ぶ資金があれば通常の事業を立ち上 げるのに有り余るはずである。これだけの資金を銀行がギブアップしなけれ ばいけない状況になってまで自主再建にこだわり続けるダイエーの経営陣は その拠り所をどこに見つけ出そうとしているのか筆者には理解できない。

今日、インターネット上でダイエーのホームページを初めて見てみた。イオ ンやイトーヨーカ堂と比べるとかなりシンプルというよりも経費削減して運 営しているのが手に取るようにわかる。シンプルなのはいいが、世間をこれ だけ騒がせているわりには、自らがどちらの方向に行きたいのかまったく説 明がない。

そんな中で、やっとのことで見つけたのが、会社案内の中にある企業理念だ 。そこには、「For the Customers」ダイエーグループはこれからもお客さま の声を聞き続けます、と書かれてある。具体的には、「お客さまが買いたい 商品を、買いたい価格で、買いたい時に、買いたい場所で、買いたい量だけ 買える仕組みをつくることです」と説明されている。


今のダイエーにとって重要なことは、会社が存続しつづける理由探しではな いだろうか。企業理念に書かれていることを、今のダイエーは実現できるの か?という疑問を日頃ダイエーで買い物をされている消費者の皆さんにぶつ けたらその答えは明白であろう。筆者の住んでいる近所にもダイエーがある が、買いたいものは見当たらないのが本音である。

企業の存続する意義は、まずは顧客価値を創造することができているかを第 一義的に考えねばならない。上場企業であれば、その上で株主価値の創造にも注意を払わねばならない。 ダイエーは、顧客の望む商品を低価格で提供すると同時に小売業というビジネスモデルで利益を創出してきた時期もあった。しかしながら、メガバンク 3行はもはやダイエーには二つの価値創造を出来ない企業になったと判断し たのではないだろうか。

今日のコラムでは、ダイエーを例に挙げて説明したが、筆者の定義する二つ の価値創造を出来なくなった企業には上場企業として存続する価値がないは ずである。ダイエーに限らず、経営の危機に瀕している企業のスポンサーに なる投資家もしくは企業は、再生への近道を模索するだけでなく、新しい事 業体としてどのような顧客価値を創造できるのかを最初に明示していただき たい。そうすれば、国民的な支持が得られて、結果として再生への近道とな るのではないだろうか。

また、二つの価値創造に気を配らなければならないのは、なにも経営の危機 にある企業だけではない。特にこの1年間でIPOした企業の経営者は要注 意である。二番目の価値創造においては、相場に後押しされて株価は完全に オーバーシュートしていると言っても過言ではない企業が多数存在している 状況である。株式分割などの姑息な手段で株主価値創造するのではなく、常 日頃から自らの顧客価値創造について真剣に考えていれば、来るべき日に備 える必要はないはずである。増収増益で連勝中のIPO企業といえども明日 はわが身であることを肝に銘じておくべきであろう。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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