■陥りやすい間違い■
株式投資では、以下のような方法論を耳にすることがあります。
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┃ ■成長市場に長期的に賭ける投資原理■
┃1)これから伸びる市場を探して、
┃2)その市場に属している企業を買えばよい
┃
┃そうすれば自ずと
┃3)長期的にはその価は値上がりする
┃
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このような投資手法で銘柄を単純に選択するのはあまりにも危険です。
■ロジックの欠陥■
≪成長市場→個別企業の利益増大≫というロジックには重大な欠陥があります。
なぜならば、
★市場の拡大が個別企業の利益増大を意味しない場合が多いからです。
そして、たとえ市場の拡大が個別企業の利益増を意味したとしても、
★個別企業の利益増大が株価の上昇を意味するとは限らないからです。
市場の拡大が、むしろ、個別企業の利益を圧迫する場合があります。
個別企業の利益が増大したとしても、逆に、株価は下がることさえあります。
事前の期待値が高すぎた場合です。
逆に、以下のこともいえます。
★市場の縮小≠個別企業の利益の減少
★個別企業の利益の減少≠株価の下落
■市場の拡大で大赤字!?■
市場の拡大は、個別企業の利益増大を必ずしも意味しません。
たとえば、どこかに成長する期待の高い市場があるとしましょう。
するとどうなるでしょうか。
まず、参入企業が多くなります。
ビジネスチャンスが大きい市場ほど、競争が激烈になる可能性があります。
★市場の拡大→競争の激化→赤字の拡大
≪成長市場→個別企業の利益減少または損失の拡大≫
というまったく逆の展開になってしまいます。
せっかくよい株を見つけたと思ったのに、暴落してしまうことになります。
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┃■都合のよいことばかり考えてはいけない■
┃
┃都合のよいシナリオばかり考えるのではなく
┃いろいろなシナリオを頭に描くこと
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市場が拡大し、参入企業が多くなると競争は激化します。
そうならないためには、競争激化を防ぐ条件が必要です。
つまり、なんらかの前提条件が必要です。
それは、新規参入を妨害するものですね。
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┃■成長市場に長期的に賭ける投資原理■
┃には前提条件が必要だった!
┃
┃つまり、新規参入を妨害するものが必要だった!
┃
┃それらは??
┃
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つまり、成長市場に長期的に賭ける投資原理には、
前提条件があったのです。
それらは、
■新規参入を妨害するもの■
1)関税
2)非関税障壁
3)国家からの独占的な権利の付与(認可、免許など)
4)知的所有権の存在
5)技術的な障壁
6)参入企業への報復行為
7)初期投資の大きさ
8)その他 法的な規制
その他にもいろいろな競争を激化させない要素があるでしょう。
ただし、これらの新規参入を妨害するものがあったとしても、
≪成長市場→個別企業の利益増大≫
とはいかない場合があります。
それらは、
新規参入を妨害する要素が時間と共に変化をしてしまうからです。
■新規参入を妨害するものが時間と共に変質してしまう■
1)関税 →自由貿易化
2)非関税障壁 → グローバル化
3)国家からの独占的な権利の付与(認可、免許など) →規制緩和
4)知的所有権の存在 →特許の有効期限
5)技術的な障壁 → 技術流出
6)参入企業への報復行為 → 消費者の不支持
7)初期投資の大きさ → 技術革新や中古設備の活用
8)その他 法的な規制など → 法律の改正など
成長市場への投資には、時間という制約があるということがわかりました。
時間は、すべてのものを変化させる力を有しているのです。
すべてを変化させる時間という強敵を相手に戦うのがファンドマネージャーの
仕事です。
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┃投資には時間軸が必要です。
┃
┃世の中の変化に翻弄されてしまうのが人生。
┃
┃限られた時間の中で、結果を出す。
┃
┃それが投資というものです。
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成長分野には数多くの企業が参入を狙っています。
新規参入者を制限して、競争を緩やかなものにすることが重要です。
新規参入を制限しているのは投資家にとっては「よい業界」です。
(つづく)
山本 潤
スローインベストメント ゆっくり考えゆったり投資
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