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医療ビジネスは成長産業
     〜ソネット・エムスリー(2413 マザーズ)谷村社長に聞く〜
    東京IPO編集長 西堀敬

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日本の人口構造は日を追うごとに高年齢者層が増えている。この春先の国会では年金の保険料率がこの秋から上がることが決定された。若者にとって甚だ迷惑な話であるが、年金受給者はほっと胸をなでおろした人も多いのではなかろうか。老後の生活を考える際に、いくらあれば生活できるのか、と皆様考えることがあるだろうが、その際に医療費や薬の出費は含まない人がほとんどではないだろうか。健康な毎日を過ごしていると忘れがちであるが、時折、平日に病院に行くと高齢者の通院者数の多さを痛感する。つまり歳を取ると医療費や薬代がそれなりにかかるということだ。そして高齢化は結果として医療分野のビジネスを後押しする事になりそうだ。

「医療オタク」と自称するソネット・エムスリーの谷村社長は少子高齢化の流れの中で医療は成長産業だと言い切る。創業当時、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーだった谷村社長にその職を辞してまで起業に踏み切らせた当社の事業の将来性についてお話をお伺いした。

当社は、会員制医療専門サイト「m3.com」を運営している。このサイトは、医師をはじめとする医療従事者が「欲しい!」と思った情報に最も迅速かつ的確にたどりつけるサイトとして、専門医療情報に特化したコンテンツを8万人以上の医師をはじめとする、18万人以上の医療従事者が会員登録をしている。もう少しわかり易く表現すると、「ドクターにとってのYahoo!」だと谷村社長は言う。

ビジネスモデルは、医療従事者を顧客とする製薬会社、医療機器会社等を対象にインターネットを活用したマーケティング活動を支援する各種サービスを提供している。具体的には、「m3.com」の会員となっている医師に対して、「MR君」と呼ばれるウェッブプラットフォーム上にて製薬会社のMR(医薬情報担当者等)が情報提供を行う仕組みに対して製薬会社が当社にマーケティングコストを支払うのである。

「MR君プラットフォーム」の機能であるが、当社と契約を結んだ製薬会社は、自社のMRの顔写真入りのメッセージを医師の会員毎にカスタマイズされた「m3.com」のトップページに表示させることができる。会員はお気に入りのMR(若い女性が多い)を選択しておき、「m3.com」のサイトを開くたびに、MRからのメッセージをバナー型メーラーにて読むことになる。

薬品会社にしてみれば、MRの営業を極端に効率化することが可能になるわけだ。当社の算定では、MRが医師にコンタクトするのに1回当り平均で1万円の費用がかかっている。一方で、医師の認識率は50%未満で、医師の1認識を得るのにかかる費用は平均で2万円ということになる。 しかしながら、当社の「MR君」を使えば、コンタクト費用は平均で400円、医師の認識率は87%、医師の1認識を得るのにかかる費用は平均で460円となり、MRが医師を訪問するコストに比べれば1/40となり飛躍的に効率が高くなるわけだ。

現在、当社と「MR君」プラットフォームの契約を結んでいる企業は15社であるが、潜在的な顧客会社数としては100社〜120社程度あり、そのうち50〜60社程度の利用を見込んでいる。また、1利用企業あたりの売上は0.8〜1.4億円で平均では1億円程度となっているが、医師会員の増加と掲載コンテンツ製作の増加により1利用企業あたりの売上は最大で5億円程度まで高めることができると谷村社長は見込んでいる。単純な算数の計算でもわかるとおり利用社数で3〜4倍、利用金額で5倍となれば、将来の売上規模は現在の15〜20倍程度まで拡大の余地がある。

冒頭でも述べたように、高齢化や生活習慣病で医療を必要とする人口は増える傾向にあるものの、製薬会社はMRを増やす余裕がないのが実情である。また、外資系製薬会社などの台頭で競争力を失いつつある日本の製薬会社にとっても、当社の仕組みはとても重要なマーケティングツールとなってきているに違いない。

「医療オタク」と自称する谷村社長がオタクを卒業するまでにはしばらく時間がかかりそうだが、裏を返せばその時間の分だけ成長が続くと言えるだろう。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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