■競合他社に負けないという前提■
ただ、いくら「よい業界」に属する企業であっても、それだけではその企業に投資するのは危険です。
たとえば、
≪参入が制限されている成長分野→限られた競争相手との戦い→敗北→損失の発生≫
というパスが残されています。
企業の強みは重要な評価ポイントです。
投資先の企業が他社よりも優位な点がなければ自信をもって長い期間投資することができません。
接客や電話対応などのわずかな態度の差が、ビジネスの成否という大きな差につながります。
また、技術的な優位性や品質も重要です。
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┃業界で優位性を発揮するためには、
┃
┃他社にはない強みがなければならない。
┃1)ビジネスマナーが浸透した組織運営
┃2)高品質
┃3)営業力
┃4)コスト優位性(スケールメリットなど)
┃5)性能に勝る
┃6)ブランド
┃7)設計力、
┃その他諸々の要因
┃
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■業界秩序■
既存のプレイヤー間で過度の競争が生じないようにするにはどうしたらよいでしょうか。
せっかく、新規参入の脅威がなくても、既存のプレイヤー間の競争が激化してしまえば、利益なき戦いに明け暮れることになりかねません。
そのためには業界秩序というものを打ち立てるべきです。
業界の秩序を強化する方向性としては、以下のことが考えられます。
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┃業界が秩序を高める方向性としては、
┃
┃1)業界の再編及び統合によるプレイヤー数の減少
┃2)シェア争いが起こらないような暗黙の棲み分け
┃ を提案する
┃3)ライバルの退出を狙って安値攻勢をかける
┃ その他諸々の要因
┃
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つまり、ライバル同士が結束して業界全体の未来を考えるという場が必要になります。
結束が有効なケースとしては、
結束することで、川上(仕入先)や川下(顧客)に対して価格交渉力が高まるというメリットが生じます。
本来であれば、他の業界の利益になっていたものを、自分たちの業界の利益に変えるという作業です。
ところが、このような結束は、談合やカルテルといって、自由競争上は好ましくない行為とされます。
結束以外に、業界の利益を守る方法はあります。
それは、圧倒的なガリバー企業が存在していることです。
独占企業であれば、業界の利益(=自身の利益)は最大化されるはずです。
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┃圧倒的なガリバー企業は、
┃ 自身の利益を最大化できる
┃
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■結論■
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┃少なくとも3つの前提条件が揃って初めて
┃成長市場への投資が有効になる可能性が生じます。
┃
┃≪成長市場→個別企業の利益の増大見通し≫
┃となるための少なくとも4つの条件
┃
┃1)前提条件その1 新規参入を妨げる要素があること
┃2)前提条件その2 競合他社に割り負けないこと
┃3)前提条件その3 業界の秩序が維持されること
┃4)前提条件その4 予期した事態が一定の時間軸以内
┃ に起こること
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前提条件その4 時間的な制約は、
前提条件その1、その2、その3が時間と共に変化してしまうために、
必要になる条件です。
大まかにいって、この4つの条件があれば、
≪成長市場→個別企業の利益の増大見通し≫
が期待できます。
ところが、利益増が、必ずしも、株価上昇を意味しません。
期待が大きく先行している場合、
≪成長市場→個別企業の利益の増大見通し→期待を下回る増益率→株価の暴落≫というパスが残されています。
このように、成長市場にいるから買いだという単純なシナリオで株式投資を行うことは極めて危険なことです。
たとえば、日本の少子化が進むという前提で、少子化になれば儲かる株を見つけたつもりになるのは、もっとも危険な行為です。(終わり)
山本 潤
スローインベストメント ゆっくり考えゆったり投資 |