ウォーレン・バフェットの投資哲学に共感を覚えたのならば、次はいよいよ実践である。繰り返しになるが、実践では「対象企業をどのように分析評価するのか」ということと、「株価水準をどのようにみるのか」という二点だけに注目すればよい。これは、換言すると、企業の中身をよく見て投資対象を決め、割安な株価でもって投資しなければならないというに他ならない。株式投資の普遍の定石がここにあるといっていいだろう。また、バフェットは、よく知られている投資スタイルの一つとして、分散投資をするのではなく集中投資をすることを勧めている。証券理論の世界では、一般的に分散投資が最も賢明な投資手法と言われているだけに、真っ向から相反する考え方である。この考え方について私は、大きなリスクを伴うが、株式投資の目的として絶対的パフォーマンスを目指すのならば、極めて重要な考え方であると思っている。私がイメージする本物の投資家スタイルでの目指すパフォーマンスは、利回り何%の世界ではなく何倍の世界である。2倍〜10倍の投資パフォーマンスを目指す以上、集中投資は、自然の選択である。貴方が強い企業を見つけたらその株が割安の場合、(投資のための全資金をつぎ込む気持ちで)断固として行動しなければならないのだ。
実際、ハサウエィ社の過去の投資パフォーマンスを検証すると、アメリカの代表的指数であるS&P500と必ずしも連動していないことが分かる。一般に、分散投資が進めば進むほど市場平均指数と連動を強めるだけに、この違いが集中投資の効果といえるだろう。極論を言えば、中長期的に見て強い企業の株価は、市場平均とは何ら関係ないのである。我が国においても、日経平均は未だ、バブル期の1/3の水準であるが、その間、ソフトバンクやヤフーをはじめ、株価が数倍になった銘柄はいくつもある。従って、先行き不透明な現在の相場環境でも市場のチャンスは、豊富にあるということができよう。
では、今の相場環境で、バフェット流に考えた場合、投資対象をどのように捉えたらよいのだろうか。私は、今の時代と彼が投資してきた時代との外部環境が違うことに留意しなければならないと思っている。その大きな違いとは新興企業の台頭である。楽天やヤフーにみられるように、現在の新興企業の躍進は目覚しいものがある。投資サイドから見た場合、比較的短期間で大きなパフォーマンスをもたらす新興企業の動きは、バフェットが積極的に投資していた1970年代〜1990年前半頃までとは全く違った企業群である。我が国においては、特に1997年の橋本政権に始まる日本版ビッグバンの動きによって、証券市場におけるさまざまな規制緩和が実施された。この様々な市場育成策が、現在の新興企業を影で支えているといって過言ではない。株式交換制度による企業買収などはその最たるものである。これにより時価総額が高い企業ほど、他企業をM&Aする力をつけることができるようになった。これまで中小型企業の位置づけは、取引や資本など大企業に対する何らかの系列化におかれているのが大半であったが、市場の信頼を味方につけることにより、大企業と対等かそれ以上の力をつけることが早期に可能になったのである。
投資家として、こうした時代の変化を汲み取ることは極めて賢明な行為だと私は思う。従って、今投資対象銘柄を考える時、私は断固として「成長企業で中小型株に投資すべし」と考えている。大企業と違い彼らの意思決定は早く行動的である。それに市場を味方につけなければならないので、投資家本意である企業が多いといえる。もし、あなたのおめがねにかなう企業に出会い、彼等に投資することになったら、投資家としてワクワクできることは間違いない。問題は、そうした企業と出会うために、どのように分析評価し銘柄を絞り込むかが次の課題となる。その点は、次回コラムにて解説することにしよう。
株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
(証券アナリスト・IRコンサルタント)
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