今月のIPOは26社とネットバブル崩壊の2000年以降最高の件数となる。26社の総資金調達額は計算していないが、大型銘柄のエルピーダメモリ、国際石油開発、イートレード証券の3社だけでも2,700億円を超す調達額となり3,000億円超の資金がIPO企業に吸い上げられることが予想される。ここ数年間のIPO市場を振り返ると、11月にこれだけの規模のIPOが続くのは久しぶりである。単純に考えると需給はかなり悪くなることだけは間違いないだろう。
今週の株式市場のトピックスはなんと言っても米国大統領選挙である。米国に依存している日本経済としては、いろんな意味合いで米国の政策が変わることが大きなリスクファクターであり、ブッシュ政権継続となればひとつの市場の重石が取れることになるのは間違いない。その意味では3日にも選挙の結果が判明し、4日以降は株式市場に方向性が出てくると考えてもよかろう。
このような環境でIPO銘柄への取り組みであるが、まずは様子見で臨みたい。公募価格よりも高い初値を追うような投資家は居ないと思われるが、公募価格割れの状態になったらチャンス到来と考えるべきであろう。また、勢いのあるときの株式市場が好むバイオやIT関連の銘柄よりもバリュー株を探していくことをお勧めしたい。
公募価格の動きを見ていると、10月の下旬から少し低めに設定され始めたような気がする。11月のIPO市場の需給を考えると、主幹事証券会社は初値の公募価格割れをなんとしても避けようと考えるはずである。そうなると公募価格は必然的に低くなり、その上にマーケットの状況如何によっては多くの銘柄が公募価格割れになることも視野に入ってくるであろう。
筆者は10月の説明会での基調講演で昨年の10月〜12月の状況が再現されるのではないだろうかとお話したが、ひょっとすると2002年の年末のような相場展開も考えられる。時価総額が極端に低く、PERでみても割安感のある公募価格が設定され、初値は公募価格近くで付いたあとにほとんど動きがなくて放置される、そんな銘柄が続出するということだ。こんな状況が来たとしたら、まさしく買場到来と考えたほうがいいだろう。
2002年の場合は翌年の4月に相場が転換したため、その勢いにのって割安に放置されていたIPO銘柄が一気に上昇した。しかしながらよく見ると、外部環境の好転だけがきっかけではなく、割安銘柄に中小型ファンドの資金が流れ込んだ結果だといえる。プロの投資家は個人投資家が放置した不人気銘柄を注意深くウオッチしているといえる。
今年に入って四半期開示が導入され、上場企業の足元の状況把握が容易になってきた。割安銘柄を見つけたら、まずは直近の業績状況を確認して増収増益基調が変わっていないかを把握しよう。投資するかどうかの判断は、個別の銘柄が公募価格よりも低い株価で推移しているかどうかだけでなく、同業他社の動きも見て割安感があるかどうかをチェックしてからでも遅くはあるまい。
今回のコラムを読んで、いまひとつしっくり来ない方は10月4日の筆者コラムを参考にしていただきたい。
→ http://www.tokyoipo.com/column/m20041004-1.htm
この環境においては「急いては事を仕損じる」ことを肝に銘じておくべきであろう。
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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