株のまったくの初心者がどれだけ機械的な投資指標で成果を出せるかについては、いろいろな意見があると思います。「どの銘柄が上がるのか」、「どの銘柄を買うべきか」という個別株情報を教えていては、いつまで経っても、株式投資は上達しません。初心者には、魚をあげるよりも、釣りを教える方が生産的です。自分の力で釣りが上達すれば、自立ができるからです。
今もっとも売れている株式投資関連の雑誌といえば、ダイヤモンドZAiですが、ZAiさんには、昨年の7月ごろから、1年以上に渡って、「丸山さん企画」の連載に参加をしています。
節約アドバイザーの丸山晴美さんが100万円の資金で株を始めるに当たって、わたしの方から、留意点を毎月、アドバイスするという方法をとっています。詳しくはZAiのバックナンバーなどをご参照ください。
100万円の資金で昨年の10月20日に丸山さんは株式投資を始めました。一年経って、日経平均が横ばい。丸山さんは124万円(うち株式7銘柄で87万円で残りは現金)となっています。年間パフォーマンスは24%です。日経平均には24%アウトパフォームしているわけですし、絶対金額でも増やされています。まずまずといったところでしょうか。大切なことは、リスクをかなり抑えて、リターンを稼いでいるということです。
わたしの役割はルールの設定に限定されています。そのルールを丸山さんが守っているという感じです。銘柄選定もすべて彼女が選んでいます。初心者である丸山さんが失敗しないように、ガイドラインだけを提示させていただいています。
ルールは、
@銘柄は10万円以下で買うこと(1銘柄は最大ポートフォーリオの10%まで)
A配当利回り2%以上、PBR1倍台以下を基本に、低PER(15倍以下)の銘柄群から銘柄を選ぶこと
B買値から10%下がったら、損切りを行うこと。それ以外は原則的に保有。
基本的にバイ&ホールド戦略をとる。
基本的にはこの3つです。
さらに、ファンダメンタルズ分析を取り入れています。
C在庫回転月数と原価率をチェックしている。在庫3ヶ月以下、原価率70%
以下という条件を入れています。
つまり、会計上の対応科目である原価とたな卸し(在庫)を見ているわけです。
さらに、
D売掛金回転月数が3ヶ月以内
E流動比率(=流動資産÷流動負債×100%)が150%以上
原価率が低いということは、在庫を持つリスクが小さいということを意味して
います。
在庫を投げ売りをしたとしても損失はでないレベルである原価率70%以下に
設定しています。
在庫というものは、たな卸し資産としてバランスシートに計上されるものです。たな卸し資産の評価というものは、外部からはわかりません。わからないものをわからないとして不安要因を抱えるよりも、わからないものを除外してしまおうという判断をしました。
一方で、在庫が実際に少ないということ(3ヶ月以内)を合わせて条件に入れています。
これは、在庫をもったとしても十分な余裕があるけれども、在庫がなるべくない企業を志向していることになります。
売掛金については、サイトが半年を越えるものは、そうでないものよりも、回収が難しくなる可能性があると考えています。そこで、売掛金回転月数が長いものを排除しています。
1)在庫が少なく、(≒原価への費用配分が少なく)、
2)売価と原価の差が大きく、
3)売掛金が少なく、
4)流動比率の高い
企業は、粉飾決算の確率が低いという利点があります。
また、過去の企業分析を評価すると、下方修正の確率も低いというのがこれらの企業群の特徴です。
これらのスクリーニングで、下方修正の半分程度は、排除できると見ています。
バランスシートが軽く、投入された労働力や資本が過度に資産化される心配がありません。投入された人、カネ、モノが単年度で費用化されるため、経年による企業価値の劣化が起こりにくいと考えています。
費用の配分が企業間に差があるのも事実です。同じ業種の中でも営業利益率はさほどの差がない場合でも原価率には差がある場合があります。利益率が高くて、借入金のない企業の純資産は着実に成長します。資金ニーズの低い企業は配当利回りをさらに高めてくれるでしょう。もしくは原価率の低いサービスを提供できるため、配当にお金を回さなくても、ROIの高いビジネスへの再投資が期待できるでしょう。
売買コストは異常に低くなりました。10万円以下の取引に対して手数料が無料、もしくは、無料に近くなったからです。売買単位も下がり、10万円以下の銘柄も数百銘柄に及ぶようになったこともうれしい誤算でした。
また、丸山さんなりに環境問題を意識して、たとえば、環境コストの高い肉関連よりは、魚関連の銘柄を選ぶなど、自らのライフスタイルや価値観を投影しながらの投資になっています。優待券の内容も慎重に選びながら楽しんでいらっしゃるようです。
山本 潤
ゆっくり考え ゆったり投資
〜スロー・インベストメント〜
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