ワールドシリーズはボストンレッドソックスが1918年以来の優勝を遂げ、ようやくベーブ・ルースをトレードしたことに由来する“バンビーノの呪い”から解放されました。今年の米国のプロスポーツを振り返ると2月のNFLスーパーボウルは、レッドソックスと同じくマサチューセッツを本拠地とするペイトリオッツが優勝、5月のNBAファイナルはデトロイト・ピストンズが制しました。
最近の米国のメジャーなプロスポーツの優勝者を見ると、メジャーリーグでアリゾナ・ダイヤモンドバックスが一昨年優勝した以外は、90年代半ばからニューヨークやフロリダなど東海岸のチームが優勢です。フットボールでは過去10年でサンフランシスコからダラス、デンバー、セントルイスなど次第に東に移動し、最近はニューイングランドが過去3年で2度優勝するなど東部が優勢です。NBAにおいてはマイケル・ジョーダンがいたシカゴ・ブルズの優勝以降はロサンゼルスやサンアントニオ(テキサス)が制しており、デトロイトは6シーズンぶりの東部チームの優勝でした。今シーズンはスーパースターのシャキール・オニール選手のオーランド移籍で東部にまずます注目が集まりそうです。こうしてみると米国のプロスポーツのパワーバランスは東部に傾いてきていると言えそうです。
メジャーなスポーツイベントが巨大なビジネスに成長している状況では、政治力と経済力に恵まれた力のある都市のチームが有利というのはあながち間違いではないと思います。今年ワールドシリーズを制したボストンもそうした都市の1つであると思います。シリーズ直後に投票日となる米国大統領選挙におけるブッシュ(テキサス)とケリー(マサチューセッツ)の対決についても、スポーツ界の流れと同様に東部地盤のケリー氏の勝利と予想したのですがこちらは見事に外れでした。
都市という単位に限定するわけではないですが、今後力を着ける地域、経済成長が期待される地域の条件は何かという議論があります。コペンハーゲン未来研究所の研究主任であるロルフ・イェンセン氏は著書「The Dream Society」において、これからの成長要因として“ストーリー”をあげています。商品・サービスを売るためには消費者がそれを選択するためのストーリーが必要となる、価格や機能ではなくその製品・サービスと自分を結びつけるストーリーが求められるという主張です。そしてそのストーリーが豊富にあり今後世界中の人を惹きつける地域として、自然・信仰・神話の残る未開発の地域、歴史・文化・伝統を持つ古都などを上げています。
私は今年5月にボストンを訪ねる機会がありましたが、この街は米国の都市の中では最もストーリー豊かな場所のひとつであると感じました。ワールドシリーズの舞台となったレッドソックスの本拠地であるフェンウェイパークの見学ツアーに参加しましたが、この球場もストーリーにあふれています。メジャー最古の球場には、県営宮城球場も真っ青の年季の入ったシート、レフト後方のグリーンモンスターと呼ばれる巨大フェンスとそこに設置された電気なしトイレなしの環境の中で人間が操作するスコアボード、テッド・ウイリアムズの最長不倒ホームランのシート、そして“バンビーノの呪い”。メジャーリーグ屈指のストーリー性を誇るレッドソックスは、その経済力にも支えられて当分は最強チームの1つであるでしょう。対抗馬はストーリー性では負けないヤンキース、そして優勝目前にボストンからトレードされて新たに“ガルシアパーラの呪い”を生む?かもしれないスター、ノーマ・ガルシアパーラやサミー・ソーサを抱え、これも歴史あるリグレー・フィールドを本拠とするシカゴ・カブスあたりでしょうか。
最後に少し株に関わるお話をしますと、米国プロフットボールリーグのNFLにはAFCとNFCの二つのカンファレンスがあり、今年の勝者ニューイングランド・ペイトリオッツはAFCに属します。記録好きのお国柄らしくスーパーボウルと株価景気の相関という統計データが取られており時々メディアに取り上げられています。それによると年初に行われるNFLのスーパーボウルにおいてAFCのチームが勝った年は、米国株価は年間を通じて下げであったことが多いそうです(過去38回開催に対して85%の確率だそうです)。今年の年初NYダウは10,409.85でスタートし、大統領選の結果を受けて盛り返したところで10,387.54(11/5)ですので今のところ僅かですが当たっています。因果関係は全くありませんが不思議とあてはまるようです。“スポーツと政治”より“スポーツと経済”の方が関係は深い?というのは皆さん納得するところでしょうか。
今回は全面的にスポーツに偏った内容になりました。次の機会があれば全く違うお話にしたいと思いますので宜しくお願いします。