東京IPOのホームページは今年9月に完全リニューアルを行った。当サイトのようなシステムでも準備を始めて8ヶ月間を要して、やっと出来た!という感じだ。当サイトのように出来るだけ早くやろう!という社内合意だけで始めて、数ヶ月で出来上がると思っていたものが、結果として3倍の時間がかかってしまったというのであればさほど問題は無いだろう。しかしながら、通常はそんなに遅延したら賠償責任問題が浮上してくるのがこの世界のビジネスである。
1年半前にメガバンクの統合により、システムが稼動しなくて多くの人が迷惑を被ったことがあった。コンピュータシステムは我々の日常生活の中ではなくてすませることのできない存在となってきていることを身にしみて感じられるのは私一人ではないはずである。
業務用で使われている各種のシステム構築は、要件定義から始まって、基本設計、詳細設計、実装(プログラミング)、評価(テスト)と進めて行くそうだが、必ずと言っていいほど期限どおり納品されたことはないそうだ。そんな悩みを解決してくれるのが11月9日に上場した企業の情報化コンサルティングを手掛ける豆蔵(まめぞう)である。
このたびお話をお伺いした荻原社長は、2000年の創業時には後方支援の役割で当社設立に参画し、システム構築の世界でオブジェクト指向の技術者ばかりの中で、経営についてアドバイザー的な役割を演じるところからのスタートとなった。創業した当時は、まさにネットバブル崩壊の年で、会社を運営するにも銀行の支援を受けることができるような状況ではなかったため、資金調達はす
べてエクイティファイナンスに頼らざるを得なかった。そのために、株主名簿 の上位はファイナンシャルインベスターとシステム構築会社の名前が並んでい
る。今回の上場も株主というよりも投資家との約束に基づくシナリオどおりの ものであったといえよう。
前述したようにシステム構築は、多くの場合、いわゆる失敗に終わるケースが 多い。失敗といっても、システムが納品されないケースは稀で、納期が守られ
なかったり、期待された内容のシステム構築が行われなくて使われなかったり するケースが考えられる。システム導入の遅延にしろ、システム機能が十分で
なかったにしろ、発注者は目論んでいた業務を予定通りスタートできないばか りか、システムの機能不足状態でオペレーションを行うことになる。この時点
ですでに、費用対効果の目算は崩れて情報化投資効率(ROI)は低下してしま うのである。
そんな問題点の解決にメスを入れたのが豆蔵が独自に確立したエンソロジ―( enThology :
enterprise methodologyの合成語)と称するシステムの開発技術 体系である。豆蔵のホームページでは、問題解決の鍵はシステム開発の標準化
であり、具体的には「システム開発工程の標準化だけでなく、システム化要求 をまとめるための要求開発工程の標準化が鍵となります。要求開発では、業務
分析からシステム化要求の策定を正しく進めることで利用者にとって本当に必 要な機能要求のみを抽出でき、それにより使えないシステムを排除します。シ
ステム開発フェーズでは、設計→開発→テスト→導入という開発工程を標準化 することで、開発期間の圧縮と問題の早期発見、柔軟な対応を実現する。」と
書かれている。
筆者はシステム開発に詳しくないので、書かれていることを読んでもすぐには 理解できなかったが、お話をお伺いするに、システム構築では、情報化の基本
計画を企画・立案する「要求開発」がもっとも重要だということらしい。当社 においては、この要求開発のコンサルティングの売上が全体の7割を占めてい
る。手法としては、低コストでより完成度の高いシステムを構築するために、 オブジェクト指向技術などのソフトウェア工学を駆使しつつ、体系的かつ効率
的に業務分析と要求定義を行い、どのようなシステムを設計・構築するべきか を導きだすことがコンサルティングの要となっている。中でも、当社の強みは
当社のシステム構築のベースとなる「オブジェクト指向技術者」がコンサルタ ントとして企業に派遣されていることである。世の中には実質的な実務のでき
る「オブジェクト指向技術者」の数が少ないらしく、当社のビジネスのほとん どは顧客からのアプローチによるものである。また、いったん顧客になるとコ
ンサルタントを指名で仕事を依頼してくるリピーター顧客が多く、現在の顧客 数70社のうち75%はリピーター顧客だそうだ。 ※ オブジェクト指向技術については当社のHP参照願いたい。
当社の強みのひとつである「オブジェクト指向技術者」であるが、荻原社長の 話によると、業界の中で自然と当社に人材が集まるような仕組みを構築してお
り、当社の社員の結束力は非常に固いと言い切る。株主および投資家へのメッ セージとして、荻原社長の中期的な目標として東証1部上場という夢を持って
おり、株主還元策としては、現状では累損ものの将来的には配当性向をできる だけ引き上げていきたいそうだ。
筆者のみたところ、業界では「オブジェクト指向技術」と言えば、「豆蔵」と いう代名詞がついているのではないかと思えるほど荻原社長の強気の姿勢を感
じた。まだまだ小粒な会社であるが、その理想は非常に高く、日本のシステム 構築の世界において、技術の最先端を走りつづけていくのではないだろうか。
※※※「アーキテクト」とは※※※
プログラマ、テスターと同じように、システム開発に携わる人の役割の一つで す。英語で建築家のことをアーキテクトと言うと思いますが、
システムを構 築するときの建築家と考えて頂ければ分かりやすいと思います。 建築家が家 を建てる時に家に住む人の要望や建てる場所の環境に合わせて
設計指針を決 定するように、システムの要求やシステムの稼動環境に合わせてシステムの骨 格を考え、設計の方向性を決定する役割を担います。
豆蔵ホームページ → http://www.mamezou.com/
東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com
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