この稿を書く前に、西堀編集長と原稿の打ち合わせをした際には、仮題を「バブル世代に何故ベンチャー経営者は少ないのか?」と置いていた。これは、筆者の持っていたバブル世代に対する印象が、“苦労を知らない”、“ヒヨワ”、“打たれ弱い”というものであったことに起因している。今年は、多少は緩和されたものの、昨今の就職活動に苦労をしている学生を見ていると、バブル世代であった自分達の頃はメチャクチャいい加減だった(=楽だった)ことが思い起こされる。有名企業ではない限り、即内定が貰え、また明大野球部の一場選手ほどではないが、食事をご馳走になったり、粗品を貰ったり、日当を貰うことなどは普通のことであった。小生のような二流大学の学生でもそのように厚遇された時代であり、一流大学となればまさに一場選手扱いされるという世の中であった。入社前研修と称して海外旅行に行った、高級車を貸与された、などは当時は幾らでも噂にあった。
しかしながら、「バブル世代は若い頃に苦労をしていないから、起業家になどはなれない」という筆者の考えは、全くの偏見でしかなかったことがデータを検証した結果分かった。さて、前置きが長くなったが、今回、東京IPOの掲載データに基づいて2004年にIPOした企業(予定も含む)166社の代表取締役の生年を集計した。166社のうち親会社等のある会社を省くため、代表取締役の持株比率が10%以上(IPO前)である95人(社)を抜粋した。実際には持株比率が10%未満であっても創業社長というケースも存在すると考えられるが(逆のケースも考えられる)、機械的に集計した。また、バブル世代の定義であるが、土地バブルが始まったと言われている1985年から株式バブルの崩壊(1990年)の翌年入社までの世代、即ち1962年〜1968年生まれと定義する。
95人のIPO起業家の内、バブル世代(7年間)に属するのは23人であった。分布図を掲載できないのが残念であるが、この世代の起業家は相対的にかなり多い。その前の世代10年間(1952年〜1961年生まれ)が18人、バブル世代以降(1969年生まれ以降)が3人となっている。
データを見て何よりも圧巻されるのは、団塊の世代である。1946年〜1948年の僅か3年間の生年に25人もの代表取締役が集中している。この世代のエネルギーの高さを改めて感じさせられる。ちなみに60歳以上のIPO起業家は17人である。
バブル世代はその前の世代よりもエネルギーが高いようである。それは一方で、団塊世代とバブル世代の中間層のエネルギーの弱さを表している。何故、中間世代は起業家層が相対的に少ないのであろうか?これはあくまでも私見であるが、以下のような要因が考えられる。
1、高度成長期を牽引してきた団塊世代と違って、それに続く世代は既に敷かれたレールの上を走っていればよかった。
2、バブルが崩壊した時期には企業の中堅層として一定の地位(課長・次長クラス)にあり失うものが大きく、また子供が既にいる年齢にもあり、リスクを取り難かった。
3、PCの本格普及期(Windows95発売)には、既に40前後になっておりPC習熟への取り組みが遅れた。
さて、バブル世代であるが、就職においてはかなり楽をした彼らも経済・社会の激変期を比較的若いうちに経験してきたことが強みになっているのかもしれない。また、学歴主義と年功序列社会からの決別がはじまった最初の世代でもある。
こうしたエネルギー度の高いバブル世代が40歳代を本格的に迎える今後は、IPO起業家をはじめとして経済の活性化をもたらすことも期待できるのでは無いだろうか?また、それに続くポストバブル世代がさらに高いエネルギーを秘めているとするならば日本の将来を悲観する必要はないのではないだろうか!
株式会社ティー・アイ・ダヴリュジェネラルパートナー 藤根靖晃(私も誇り高きバブル世代です)
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