┏ ――――――――――――――――――――――――――――― ┓
新規公開株式情報の東京IPO
http://www.tokyoipo.com/
┗ ――――――――――――――――――――――――――――― ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
投資を考えるシリーズ〜12.本物の投資家になるために
   株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
   (証券アナリスト・IRコンサルタント)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あっという間に師走である。果たして、この1年間の皆さんの投資パフォーマンスは、如何だったであろうか。個人投資家のいいところは、機関投資家と違ってワンイヤールールに縛られないところだ。機関投資家の多くのファンドは、1年の運用報告書によって、投資家に運用パフォーマンスを示さなければならない。運用パフォーマンスの成果如何によって、次年度の資金運用を任されるのだから大変だ。

元来、企業経営というものも、1年間で締めくくれるものではない。大切な株主の資金を預かっているのだから、きめ細かく開示をしていくのは極めて重要な事だが、単年度の決算で企業を評価することなど絶対にできない。考えてみれば、企業分析をする際には、過去3期分なり、5期分の業績の推移をみて、その企業がどのような考えと戦略をもって成長してきたのか見極めようとしているが、いざ投資の段階になると、ほとんどの投資家が今期、もしくは来期の企業業績で短期的に企業を選別しようとする。確かに、目先の企業業績を分析予想することは、株式の売買タイミングを見極めるには重要な指標となるかもしれないが、企業本来が持つ価値を見極めるためには、1期分の将来予想だけでは不十分であることは、明白である。

現在の証券市場における情報が、こうしたワンイヤールールの元に成り立ち、機関投資家寄りに構成されていることを賢明な個人投資家は気がつかねばならない。だから機関投資家と同じように目先の企業業績に一喜一憂する必要は全くない。むしろ、企業が発表する目先の悪い情報による株価の急落は、株数を増やすチャンスと思えるぐらいの投資スタンスが肝要である。

私は、この1年間のコラムを通じて、本物の投資家になるための心構えとして、ウォーレン・バフェットの投資手法を紹介しながら、現在にも通ずる企業分析のあり方を個人投資家は取得すべきであると説いてきた。一方、バフェットが生きてきた時代と今の時代を照らし合わせたとき、外部環境が違うことにも留意すべきであるとも述べた。このことはすなわち、バフェット流の投資戦略を基本としながらもプラスアフファの投資要素が極めて重要であるとの結論に達している。

復習になるが、本物の投資家とは、株価ではなく企業を買うという視点で以って、投下資本の最大化(ROIの最大化)を目的とし、その目的達成のために、投資対象を綿密に調査し、その将来性を予測し、資本投下後も、投下した企業を常時ウォッチし、あるときは積極的に経営者に語りかけ、株主として企業の成長にアクティブに貢献することを実行する人物である。そして現在は、その分析対象を絞り込む術として、成長著しいベンチャー企業に目をむけ、中小型株投資に注力すべきである。また、その分析の手段として企業IRの重要性がある。特に、重要なファクターとして、企業の将来に向けての成長性を予測
するのに、企業IRは欠かすことのできない活動である。企業IRとは、企業から一方的に情報発信するワンウェイ的な活動ではなく、企業経営者と投資家が双方向に積極的に語り合い、相互に信頼しあって、投資家サイドからも積極的に企業の成長に結びつくヒントを投げかけるツーウェイの活動であることは先述した。

投資対象を絞り込むための企業選別は、膨大な作業となるが、効率よく有望銘柄を発見したいのなら、まずは企業IRが活発な企業に目を向けたらよい。そして、その企業のIRが本物なのかを見極める目を凝らすことだ。企業のIR活動を通じてその企業の様々な特長が見えてくるはずだ。投資の最終決定まで決して慌ててはいけない。投資の勉強という意味では企業IRの参加が最も効率の良い勉強にもなるはずである。

1年間、本物の投資家像を私なりにイメージしてきたつもりだが、こうした本物の投資家が日本にはまだ少ないというのが率直な気持ちである。投機ではなく、本当の意味での投資が増えれば証券市場は、もっと効率化し代謝が進み、日本はもっと強い国になれるはずである。本シリーズを終えるにあたって、読者の皆さんの投資パフォーマンスが向上することを切に願いたい。

株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
(証券アナリスト・IRコンサルタント)

(c) 1999-2004 Tokyo IPO. All rights Reserved.