先月はクリスマス買いの納会売りが、キャピタルゲインの一機会であることについて触れた。これは短期間での話でしかない。折角の年末なのだから、今回は年間の傾向について考えて見たい。
短期で言えば、過去一年と来る一年でどこが異なるのか、過去10年とこれからの1年で何が違ってきているのかという問題だ。
時代の変化を10年タームで捉えれば、経済力への見方が異なってきている。平たく言えば、日本経済の復活だ。自動車を筆頭に再び世界首位を狙う企業が登場してきた。不況の代名詞となっていた金融部門が立ち直る態勢を見せてきた。経済の枠組みが再構築されてきている。これは、経済原理や合理性が優勢になることを示唆している。早耳やインサイダーよりも、原則に則った発想が通る社会になることを意味している。
短期での変化で大きいのは、社会を担う主体の世代交代だ。団塊の世代ジュニアが主な稼ぎ手となり始めて、投資家層に厚みが出てきた。ネット取引の口座開設が急増し、その内訳では若年層が主体となっている現実は、世代の入れ替わりを教えてくれる。
一連の変化で、過去1年は証券市場での売買高が記録を更新した。とりわけ人気を集めたのがIPOだった。この人気はいまも続いている。話を総合すれば、IPO人気を支えたのは、ネットで口座を開設した新投資家層である可能性がある。
過去1年のIPOを初値PERの分布で見ると、一つの特長を見出すことができる。ある水準に集まる傾向があるからだ。その塊は20倍、40倍、100倍以上の3つだ。推定するに、20倍は普通の期待、40倍は大きな期待、100倍以上は夢として買いに行く時の目標限界となっている。
この目標限界への見切りは早い。1ヵ月後株価の分布見ると、初値40倍の塊は雲散霧消してしまうからだ。PERはマザーズで高く買われる傾向があり、特徴がある小売業の人気も高い。
新世代の投資家が参入してきているIPO市場へは、そんな判断判断を持つ投資家が新基準を作りあげようとしている。その点で新しい枠組みが生まれようとしている。新時代が始まる、と思うべきだろう。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)
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