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リスクとリターン
    クレイ フィンレイ プリンシパル 山本 潤
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何事も、株式投資や設備投資から自己投資に至るまで、投資と名のつくものは、リス
クとリターンを対に考えることが大事です。

大きなリスクを取って、大きなリターンを得る。
小さなリスクしか取らないで、小さなリターンを得る。
どちらも同等です。

企業にとってのリターンとは、収益です。
企業にとってのリスクとは、損失の可能性です。

事業(ビジネス)は、投資をして、収益を回収をすることです。
投資をして、収益を回収できないとき、当然ですが、損失を被ります。
どんな小さな事業も、オフィスを借りたり、プリンタやPCをそろえたり、回線をひいたりして、まず、現金の流出(=キャッシュアウト)があります。

その後、ビジネスを軌道に乗せることで、事業資金を回収(=キャッシュイン)するのです。

100万円を稼ぐとします。

200万円を投資。300万円を回収。ネットで100万円稼ぐ。

あるいは、10万円を投資、110万円を回収して、ネットで同額を稼ぐ。

2つのビジネスは同じ100万円を稼いてはいますが、投資額がまったく異なります。

まず、投資額に対する回収額という指標がリスクとリターンの指標になります。

回収額÷投資額。この数字が大きい方がとっているリスクに対してのリターンとなります。

ところが、この指標だけでは、リスク対リターンの関係をすべて表すことにはなりません。

たとえば、宝くじはどうでしょうか。

リスクは300円ですが、リターンは3億円です。
これ以上リスクに対するリターンが大きい事業はないのではないでしょうか。

宝くじは事業として魅力的でしょうか。

ある会社があります。
約款には「わが社の業務は宝くじを買い続け、夢を見ることである」と書いてあります。経営者が宝くじの購入代金を調達するために、お金を貸してくれ頼んできたら、どうしましょうか。

わたしなら貸しません。(誰も貸さないでしょう。) 


リターンが得られる目処がしっかりしていることが重要です。
しかし、リターンが得られる目処はどうやって計測するのでしょうか。

結論からいえば、損益計算書と貸借対照表とキャッシュフロー計算書を見てある程度の判断をします。

ネットのキャッシュフロー(キャッシュインからキャッシュアウトを引いたもの)がいつも大幅な黒字の企業であれば、リターンはほぼ得られると考えて間違いないでしょう。

反対に毎期のようにキャッシュフローが赤字で借金漬けになっているのであれば、リターンが得られる可能性が低いと考えてよいでしょう。

また、投資額に対する回収額、リターンの可能性だけでは、リスクとリターンの関係をつかんだことにはなりません。

どれだけの投資回収期間がかかるのかということも大切な基準です。

たとえば、食券を先に顧客に買わせて、前払いをさせるお店の回収期間は、一瞬です。
顧客が自動販売機に入金を済ませたとたんに、回収が終わります。
それから、投資が始まります。うどんなら、うどんをうまくつくらなければなりません。ゆですぎるリスク。
お盆で運んでいるときに、ころんで、おつゆをお客にこぼしてしまうかもしれません。
クリーニング代を弁償するリスクもあるでしょう。
執行リスクはつきものです。

あるいは、契約してから、5年ぐらいしてようやく完成するようなもの、船をつくる会社はどうでしょうか。

一瞬で回収できる事業と回収が長年かかってしまう事業とは、どちらが高い評価となるでしょうか。


あるリスクを軽減しようとすれば、ほかのリスクが生じるということもよくあります。

食券の自動販売機を設置する。
初期コストがかかります。リスクです。
このリスクを回避するために、店の人が食券を売ることにします。
新たなリスクが発生しています。忙しいときに、もらい忘れるとか。

たとえば、回収を早めようと、後払いのお店が前払いになれば、いままできていた顧客が「え? 前払いなの? どうして?」と不愉快な気分になって、もうきてくれないかもしれません。これも、回収リスクを回避しようとして、新たなリスクを背負う例です。

=まとめ=
1)投資(キャッシュアウト)と回収(キャッシュイン)の差や比率を考える。
2)回収可能性を考える。
3)投資から回収までの回収期間を考える。

大まかにこの3つを考えて、リスクとリターンを計測します。

=例=
PER15倍の株が将来PERが30倍になるという見込みなら、投資と回収の比率は2倍。投資リターン100%です。
その可能性は10%とすれば、期待リターンは10%となります。
30倍になるために、2年間程度の時間がかかるなら、年率の期待リターンはさらに下がって5%となります。

期待リターンは5%です。投資を実行しますか、それとも見送りますか?
そういう判断を投資判断といいます。

アナリストの仕事は投資判断をすることです。
そして、株式投資の投資判断をするためには、リスクとリターンの関係をしっかりと抑えることが必要です。
(リスクを抑えるとリターンも下がる。または、逆も真です。このような関係をトレード・オフといいます。)

山本 潤
ゆっくり考え ゆったり投資
〜スロー・インベストメント〜

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