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編集長のジャストフィーリング 〜相場の流れを読む(最終回)〜
東京IPO編集長 西堀敬

いよいよ明日から今年のIPOが始まる。すでに今週上場予定の8社の銘柄を手中にして、上場日を心待ちにしている読者の方も大勢いらっしゃるのではないだろうか。残念ながら一銘柄もお持ちでないかたは、初値を買うべきか買わざるべきかを悩んでおられると推察する。1年前を振り返ると、第一号銘柄のブレインナビ(ヘラクレス : 2388)が初日を含めて7連騰したのが記憶にある。今年も同様の状況が起こるか?という質問に対しては、流れは変わっていない、という答え方をしておこう。但し、IPO神話とも言われているように、年初のIPO銘柄は高騰しやすく、その後の値動きには要注意であることをご承知おきいただきたい。

さて、年初から始めた〜相場の流れを読む〜 シリーズであるが、今回が最終回となる。タイトルにそぐわない内容で、期待はずれだったかもしれないが、最後まで読んでいただいた方にはお礼を申し上げておきたい。今回は、少子・高齢化による日本人のライフスタイルの変化をとらえて成功しているビジネスモデルについて具体的な銘柄名を書いて終了としたい。

まず日本国民の年齢分布と富の年代別配分をみると、15歳未満の未就労の人口が65歳以上の人口に拮抗してきている一方で、国民金融資産の50%超は60歳以上の層に帰属している。今日、高齢者の家庭では耐久消費財を購入する意欲に欠けるようになってきたが、日頃の消費においては一点豪華主義的な高級品志向がある一方で、日常品においては、ある程度のクオリティが保たれていれば、安ければ安いほどいいという、両極端な消費行動がみられるようになった。また、高齢化による世の中のライフスタイルの変化により、高齢者は自らのためだけではなく、子供や孫に対しても相当額を支出する傾向にあり、その対象となる商品・サービスを提供する事業分野もでてきている。

現在、日本の出生率は2003年に1.29まで低下しており、少子化は国民経済的に見れば非常に大きな問題をはらんでいる。しかしながら、一人当りの子供に投下されるお金の額は、両親、祖父母、叔父叔母と3つのポケットから出費される傾向にあり、1世帯当りの所得額の低下と反比例して、年々増加している。このような少子・高齢化の動きを背景として、ニッチマーケットとして立ち上がってきた事業群が裾野を広げつつある。

この分野の具体的な例としては、高齢化に直結し、法制度も整ってきた介護関連ビジネスである。ケア付き高齢者住宅を運営するゼクス、軽作業の請負から介護ビジネスに参入したグッドウィル・グループ、在宅老人向けの酸素機器などを生産販売する星医療酸器などがあげられる。

少子化を背景にフォローの風が吹いている例としては、子供向け写真スタジオを運営するスタジオアリス、成人式の「振袖」を核に着物を販売する京都きもの友禅、親と同居する可処分所得の多い若い女性層をターゲットにしたカジュアル衣料小売のポイントなどがあげられる。

また、高齢化による世の中のライフスタイルの変化による消費行動に対応したビジネスとしては、健康をテーマに整水器の製造する日本トリム、健康と食の安全をテーマに湯葉・豆腐料理店を営む梅の花などがある。

最後のビジネスモデルは金融である。銀行、生保、損保、証券などが入り混じって参加してきている団塊の世代の退職者に対する資産運用サービスの提供が非常に有望となろう。先日のメルマガにも書かせていただいたが、2〜3年後に60歳の定年を迎える男性の人口は100万人を超す、この規模で数年間退職者がでてくるのである。インターネットは先週紹介したようにイーコマースのインフラとなり御用聞きの代りにもなるが、インターネットをインフラとして使った最適なビジネスモデルは金融であることは皆さんも承知のとおりである。

日本のように成熟した社会と経済状況下では、そうそうインフレは起こりにくく低金利の時代は続かざるをえないと筆者は考える。そうならば、老後の資産運用は自らの判断と手で行いたいと言う人たちがいて当然であろう。各種の金融サービスと商品をインターネット上で提供するビジネスがますます有望となってくるのではないだろうか。また、それに付随して、シニアに特化した資産運用のノウハウ提供や各種情報提供を行う事業者の登場もありうるのではなかろうか。

少子・高齢化、女性の社会進出、インターネットの普及などを新興市場に上場している企業を取り上げながら説明してきたが、いずれも身近に起こっていることや自らの行動パターンを少し分析するだけで、投資の対象となりうる企業はおのずと思い浮かぶものである。

ときには第三者の話を聞くことも重要であるが、銘柄は意外と身近なところにあるものだということを忘れてはならない。上述した事業に近い企業が上場してきたら注意深く見守っていただきたい。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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