PER(株価収益率、株価÷予想一株当たりの純利益)は、人気のある株式指標のひとつです。
PERの低い銘柄を買うのが株式投資の鉄則といってもよいでしょう。
しかし、低PERと思って投資をしたものの、実は、割高な株だったということが起こりえます。
今回は、失敗しない低PER株の見つけ方を考えてみましょう。
さて、「PER15倍以下」という条件をつけて、機械的にスクリーニングをした場合、
その銘柄が本当にPER15倍以下なのかを、再度、ご自身でチェックする必要があります。
もっとも注意すべきことは、純利益の水準です。
税金を払っていないので、PERが安くなっている場合があります。
特別な利益を計上しているなど、実力以上の純利益を計上しているわけです。
「PER15倍だ!安い!」と思ったら、税金を払っていなくて、実質はPER30倍だったという笑えない話があります。
恥ずかしい話ですが、わたしにも経験があります。
ある株を空売りしたのですが、
PER30倍だと勘違いしていたのです。
実は分割後の純利益で計算してしまったのです。
ケアレスミスでした。
実際は、その株はPER15倍と割安だったのです!
痛い目に会いました。
通常は、経常利益の50〜60%程度が純利益の水準です。
経常利益の水準の6掛けをして、PERを再計算してみる必要があります。
PERの安い理由は様々です。
以下の理由が主なものです。
■PERの低い企業の特徴
1)成熟産業、もしくは、衰退産業に属している企業。競争が今後激化する懸念がある産業に属する企業
2)ビジネスサイクル(景気循環)の山にある企業
3)財務内容が悪い企業
4)税金を払っていない、特別な利益があったなどの理由で、実力に比して利益が過大に申告されている企業
5)時価総額が極端に低く、流動性がない
成熟産業とは、万年低PERです。万年PERが低いということは、株価はあまり上がらない可能性があるわけです。
たとえば、電力やガスという公益セクターは、成長しようにもこれ以上の成長は難しいセクターです。
ビジネスサイクルが山にあるということは、今が出来すぎの状態にある企業のことです。
電炉株などは、スクラップは下がったのに、市況は上がって、マージンは大幅に拡大しました。
でも、市場参加者の多くは、
「これは出来すぎだ。1〜2年後には大幅に利益は縮小するだろう」と見ているのです。
固定費の高い企業の場合、売上げが少し落ちただけで、利益はすべて吹っ飛びます。
PERはあくまでも将来の利益を平準化したイメージで使うべきものです。
財務内容が悪い企業は、株主への還元は期待できません。
株価が上がれば、エクイティファイナンスをします。
利益が出れば、借入金を返済します。
さらに利益が出れば、研究開発費や接待費などを増額します。
いつまでたっても株主還元はされないままです。
これらの条件になるべく合わない低PERの銘柄を発掘していただきたいものです。
すくなくとも、財務内容の悪い企業は敬遠していただきたいものです。
純利益水準が異常で低PERに見えるだけの企業も除外してもらいたいものです。
ビジネスサイクルの見通しや産業の競合条件の悪化具合は、プロが見ても、外れることがあります。
景気の山と思ったら、まだ先に山がある可能性があります。
競争激化は一方的にどんどん進むものではなく、緩和と激化を繰り返すものです。
ある産業の中で、みんなが赤字になって、そのままジ・エンドとなる幕引きはありません。
反対に、みんなが儲かって、そのまま成長を続けるというシナリオも考えにくいのです。
低PER銘柄をスクリーニングした後に、買いの候補をひとつひとつ、
上記のような視点でチェックしてみるとよろしいのではないでしょうか。
山本 潤
ゆっくり考え ゆったり投資
〜スロー・インベストメント〜
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