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新規公開株式情報の東京IPO
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コーヒーブレイク 〜来日決定!〜マンUを決算書から見る(1)
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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最近浦和レッズがレッズタウンを作るという新聞記事がありましたが、その中で将来は球団の株式公開も検討するとありました。他にも球団やプロ・リーグ運営会社の株式公開という構想をちらほら耳にするようになっています。そこで今回は日本にはまだ存在しないものの、世界中には幾つかある株式公開しているプロスポーツ・クラブの財務は一体のどのようになっているのか?をご紹介します。先日、今年夏の来日が発表されたマンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)を題材とします。

マンUのHPのIRページからのアニュアルレポートをダウンロードして読んでみました。まず会計年度が8月から7月までという点、やはりサッカーのシーズンにあわせた会計年度の設定のようです。以下の財務状況のサマリーを紹介します。

マンチェスター・ユナイテッドの連結業績(同社アニュアルレポートより)

2003年7月期

2004年7月期

増減

総収入(百万円)

33,735

32,975

98%

営業利益(百万円)

5,129

5,811

113%

税引後利益(百万円)

5,811

3,783

71%

EPS(円)

22

14

64%

配当(円)

4

3

66%

*1ポンド=195円で換算

総収入は2%減となったものの、営業利益は13%増加。しかし税引後の利益は30%近く減っています。これは営業外の項目において、多額の損失(後述)を計上したことによります。02/03シーズン終了後のスーパースター、ベッカム選手のレアル・マドリッドへの移籍に伴う移籍金の受取等で利益を計上したものの、バルデス、フォーラン両選手の解雇で多額の損失を計上、合計では6億円の損失となっています。ちなみに03/7期は選手の移籍関連で27億円の営業外利益を計上していましたので非常に大きな減益要因となりました。

 次に収入をセグメント別に開示していますのでこれを見てみます。試合当日の収入、メディア関連収入、それとスポンサー料等収入の主要3セグメントに別れています。

同社のセグメント別収入(同社アニュアルレポートより)

03年7月期

構成比

04年7月期

構成比

入場券等の

試合当日売上

13,767

41%

11,934

36%

放映権料等の

メディア関連収入

10,959

32%

12,188

37%

スポンサー料等の収入

9,009

27%

8,834

27%

*1ポンド=195円で換算(百万円)

入場券等の収入はシーズンチケットの売上で46%、それ以外の入場券売上で33%、その他会場での飲食販売などとなっています。03/7期はホームグラウンドでのチャンピオンズ・リーグファイナル開催がありましたが、04/7期はこれがなかったことを含めてホームゲーム数の減少により試合当日の売上が減少しています。

メディア関連収入は国内の試合放映で60%、チャンピオンズ・リーグの試合放映で32%を占めています。前年のシーズン(02年〜03年)でのプレミアリーグ優勝で放映権料が上がったことによりメディア収入は増加しています。ただ昨シーズン(03年〜04年)はプレミア・リーグで3位に終わったことにより、05/7期のメディア関連収入は一転して減少と見込んでいます。

スポンサー料等の収入ですが、ナイキが46%、ボーダフォンが20%を占めています。さらにこのセグメントには個人向けの金融事業の売上も含まれています。マンUブランドのクレジットカード事業(会員9万人)、さらに個人向けの住宅ローン(借主合計750人、総額163億円の貸付残高)。これはバランスシートにはないのでおそらく仲介でしょう。またシーズンチケット購入者のうち3,500人に対してチケット購入資金のローンを提供しています。

おおまかに言って収入については前期成績に連動するリーグ戦の放映権料収入とあらかじめスケジュールの決まっているリーグ戦の売上は期初に確実に見込める(ホームゲームはすべて売り切れとのこと)。あとはトーナメント戦の結果如何。営業外の収益では選手の獲得・移籍が大きな不確定要因と言えそうです。

 ここまではP/Lの内容でした。しかしこの会社の決算書の面白い点はバランスシートと注記にあります。次回はこの部分をご紹介します。

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)

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