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ビルは生き物  〜丸誠(2434JQ)西村社長に聞く〜
東京IPO編集長 西堀敬


株式会社丸誠 代表取締役社長 西村 隆氏

読者の皆さんがお勤めになっている会社が入居しているビルは、どこかの誰かがいろんな管理を行っていることはご存知だろうか。管理人・ガードマン・清掃係りの人までくらいは存在感があるが、それ以外となると誰が何を管理しているのかをご存知の方は少ないのではないだろうか。筆者は集合住宅に住んでおり、数年前に管理組合の代表をしたときに、これほど多くの管理業務があるのか?と大変驚いたことが記憶にある。今回は、2月18日にJASDAQに上場したオフィスビル設備の保守点検・警備・清掃を手掛ける丸誠の西村社長にお話をお伺いした。

当社の創業は1966年にまで遡る。テレビ向けの番組制作などのプロダクション会社である東通の子会社として設立された。創業時の仕事は赤坂にある現在建替え中のTBS会館の管理業務のみで、総勢13名のスタートであった。完全に独立したのは創業社長の庄子氏が東通の保有する株式をすべて引き取った1975年のことである。その間1969年にはスーパーマーケット西友の事業パートナーとして、同社から20%の資本を受け入れて首都圏の店舗管理を任された。そのほかに、1967年は電通本社、フジテレビ本社、1972年には品川のパシフィックホテル、成田JALホテルなどの管理業務を請負い、徐々に大型ビルの契約を増やしていった。

まず事業内容について説明すると、事業は大きく三つの分野に分かれている。

(1)設備エンジニアリング事業:各種建物の設備保守点検業務、建築設備工事、建築工事、内装仕上工事

(2)環境エンジニアリング事業:建物清掃業務

(3)マネジメント&サービス事業:常駐警備業務、複合警備業務、駐車場管理業務、管理人業務、海外スーパーバイザー業務、システム開発・運用業務、商品販売・輸出

それぞれの売上比率は、設備エンジニアリング事業:79.3%、環境エンジニアリング事業:7.8%、マネジメント&サービス事業:12.9%の構成となっている。

当社の特徴は、設備管理業務の売上比率が8割を占めるところにある。同業他社の多くは清掃業務から始めたところが多い為、当社の得意とする設備管理業務は売上の50%未満になっているところが多い。大型のビルが多い都内において、最大手の放送局本社ビルの契約を創業間もない頃から獲得できたのは、複雑なオフィス設備を管理するところに当社の付加価値があったと言える。また、顧客にはオフィスビル以外にもホテル、病院が多くあり、衛生管理などの面においても高度な管理ノウハウが必要となる分野も手掛けている。

最近は、当社が独自に開発したPLCと呼ぶ移動携帯型運転データ収集装置を使って、ビル内の各部屋の震動、電流、電圧等を測り省エネを実現できるソリューションをビルオーナーに提案するなど加熱する都心部のビル経営での生き残りに貢献している。最近契約した大型物件としては、日テレの汐留社屋、電通の汐留本社、台場のフジテレビ社屋、トリトンスクエアオフィスタワーなどがある。いずれも超インテリジェントビルで、使用されている設備は非常に密度が高いものが多く、IT技術などを駆使しないと設備管理にかかるコストが相当なものになるような物件ばかりである。収益性について、当社は設備の濃密度合いを計測して契約金額を算出しており、設備管理については床面積の広さなどとは直接の相関関係はないため、清掃業務など延べ床面積の大きな都内のビルとの契約においては労働集約的な部分が多い同業他社に比べ、レバレッジが効きやすいとも言える。

事業は非常に地味な分野であり、財務諸表を見ると完全なる無借金企業の当社が、この度上場するに至った背景について西村社長にお伺いした。当社が位置する業界の動向としては非常に競争が激しく、淘汰と統合の時期に入ってきていると認識している。過去からの長い付き合いがあるから契約が守れるものでもなく、日テレとフジテレビの両方を契約できるなどは昔ならありえなかったことだが、現在は実力主義の時代に入って浪花節的な俗人性では契約はとれない時代となってきた。むやみに規模を拡張すればいいというものではないが、設備管理に強みをもつ当社には業界内で優位性が存在し、その強みを生かして、業界内でリーダーシップを取っていくべく社会的な知名度と信用度の向上が必要と考えた。また、今後の事業展開としてプロパティーマネジメント、不動産ファンド、PFIなどの分野に進出していくにあたり、より会社の透明性を高め、優秀な人材の確保にもIPOが役立つと判断した。

最後に個人投資家の皆さんに一言メッセージをいただいた。株主還元について、今期末は一株15円の配当を予定しており、今後は15円をベースにして徐々に引き上げていきたい。事業目標としては、年商150億円、経常利益率の5〜6%の確保を掲げている。

筆者の印象としては、創業40年近い歴史のある当社であるだけに事業環境分析はしっかりと行われており、非常に堅実なイメージを受けた。業界は単価の引き下げ競争で厳しい環境であるが、近代化されたインテリジェントビルがひしめき合う都内において、ビルの付加価値競争が激化しており、より効率化された設備管理の仕組みを構築している当社の出番は多くなりそうな気がする。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

丸誠ホームページ
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