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コーヒーブレイク 〜来日決定!〜マンUを決算書から見る(2)
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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今回はプレミアリーグの名門、マンチェスターユナイテッドのバランスシートのお話です。以下にバランスシートの主要項目をご紹介します。

2003年7月期

2004年7月期

構成比

無形固定資産

10,784

15,249

28%

有形固定資産

24,473

24,375

44%

流動資産

16,517

15,386

28%

総資産

52,007

55,263

100%

株主資本

30,498

33,794

61%

*1ポンド=195円で換算(百万円)

この中の無形固定資産がポイントです。これは選手を他のクラブから獲得した際に支払った移籍金です。移籍金の会計上の扱いは、一旦無形固定資産に計上し、個々の選手の契約期間に応じて償却するというものです。ただし契約期間中に選手の他クラブへの移籍、解雇が発生することにより、未償却の移籍金と新たに受け取る移籍金との差額により大きな利益や損失が発生する点が大きな特徴と言えます。解雇の場合は未償却分が丸々損失になります。04/7期にはベッカム選手を放出した際に未償却の移籍金を上回る金額をレアルマドリッドから受け取ったことで利益を計上しています。その反面まだ契約の残るバルデス、フォーラン両選手を解雇したことにより大きな損失が発生しています。この意味でクラブのGMの意思決定はチーム運営にとって重要であると同時に、株主に対する経営責任という観点からも大きな影響があります。

さらに04/7期のアニュアルレポートからこの項目に関して注記の開示内容が大幅に充実しています。移籍金が百万ポンド(約2億円)以上の選手について、移籍金の扱いを個別に開示している点です。移籍金総額、償却済額、未償却残高、償却スケジュール、さらに他クラブへ移籍あるいは解雇した選手の契約に伴う利益、損失、キャッシュフローが開示されています。日本ではプロスポーツ選手の報酬等は新聞に掲載されますが、その出所と正確性はわかりません。マンUについてはアニュアルレポートに記載されている以上真実である、あるいはその正確性については経営陣が責任を持つと言えるでしょう。

以下に注記にある移籍金の詳細を示します。

バランスシート上の移籍金残高(無形固定資産)の内訳

2004年7月期

期初の移籍金

17,413

新規獲得選手の移籍金

9,867

移籍・解雇選手分の残高

-1,521

放出予定選手分の残高(流動資産へ振替)

-1,443

移籍金の支払額合計

24,332

期初の償却額累計

6,630

今期償却額

4,251

移籍・解雇選手分の償却済額

-1,014

放出予定選手分の償却済額(流動資産へ振替)

-1,170

償却額の累計

9,076

当期末のネット残高(償却後残高)

15,255

*1ポンド=195円で換算(百万円)

期末で約150億円の移籍金の未償却残高がバランスシートに、無形固定資産として計上されています。このうちフェルディナンド選手で37億円、サハ選手で21億円が計上されています。注目のベッカム選手の移籍に関しては、24億円のキャッシュを移籍金として受取。これを含んで合計32億円の受取。一方でサハ選手の移籍金として24億円を筆頭に合計で約90億円を支出しています。

ちなみに年度末後の後発事象として、マンUはスーパースターのウェイン・ルーニー選手を獲得しています。これに関する経営者のコメントは、「我々は04/05シーズン終了後の獲得を目指していたが、所属先のエバートンが放出を希望し、それに対し獲得の意向を示したニューカッスルに奪われないため、1期早く獲得した。その投資のため04/05終了後は、誰か他の選手を放出しない限り補強を行う資金がない」とあります。ファンはオフシーズンの補強をあれこれ予想しますが、決算書がその材料にもなりそうです。

高額年俸のスター選手は戦力的にも、スポンサー契約等のためにも必要な一方で、ケガや不振で一気に不良資産化するリスクがあります。その場合、バランスシート上で資産化した移籍金を一気に損失処理し、赤字転落という可能性もあります。株式を公開しているクラブにとっては、年齢の高い有力選手の獲得は非常に大きな投資判断、あるいは経営判断と言えます。以上、マンUを題材にプロスポーツ・クラブの決算書を見てきました。

今回幾つかの証券会社に英国株の売買が可能か問合せをしてみました。残念ながら取り扱っていないという返事ばかりでした。ちなみに株価は270ペンス(約1.125ポンド=220円)前後。PER36倍、時価総額は1,300億円以上となっています(2/17現在)。

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)

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